カーボンニュートラルの目標達成のため再生可能エネルギー(再エネ)の大量導入は不可欠であるが,自然条件や土地利用の制約等により,自治体によって再エネの発電ポテンシャルは異なる。そのため,複数の自治体を連携させ,再エネの余剰分を電力需要の大きい自治体へ供給することで,地域全体の再エネ利用率向上を目指す取り組みが検討されている。そこで本研究では,北九州都市圏域の18市町を対象に,再エネ由来電力の余剰が発生する自治体から電力需要の多い自治体へ再エネ由来電力を供給することによる効果の推計を目的とした。推計にあたっては,1時間当たりの各自治体の電力需要量と再エネの供給可能量,自治体間距離,自治体を通過する送電線の容量を考慮した。
推計にあたって,九州電力送配電の系統情報をもとに,送電線の容量の情報を抽出した。送電線の容量については,制限なし,運用容量,空容量の3ケースを想定した。隣接自治体間の送電線の距離は,各自治体の市役所・町役場同士を結んだ直線距離と仮定し,最短経路となるルートを導出した。1時間当たりの電力需要量と電力供給量については,環境省の自治体排出量カルテをもとに算出した。需要量は,部門別の需要特性を,供給量は再エネ種類別の発電特性をそれぞれ考慮して年間値から時間値を推計した。最適化計算には線形計画法を用い,電力融通を行う自治体間の電力融通量とその自治体間の距離を乗じた値の合計値の最小化を目的関数として定式化し,送電線の容量を制約条件として設定した。将来的に再エネ由来電力の供給量が増加したとしても,送電線の容量による制約があるために融通できる電力量には制限がかかり,自治体間で電力融通を可能とするためには現状の送電線の容量では不足する可能性が示唆された。