抄録
現在我が国で生産使用されている有機塩素化合物の環境への年間放出量を推定することは環境汚染の予測に有用であるが,放出量の推定は環境濃度の分析からだけでは困難である。そこで国内の無機化合物を含む含塩素製品の生産量とその用途から有機塩素化合物の年間の環境への放出量を推定し,この放出量から環境運命予測モデルにより環境媒体の大気,水,土壌,底質にどのように分配されるかを計算し,実測されている環境濃度との比較を行った。 大気や河川水中で実測された揮発性有機塩素化合物は生産量を反映しており,生産量の調整からリスク管理が可能なことを示した。半揮発性化合物は生産量が少ないものが多いため,使用放出される地域の周辺に限定されたそれぞれの汚染地域でのリスクアセスメントが必要であることを示した。