環境科学会誌
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酸性雨による滋賀県森林土壌からの塩基およびアルミニウムの溶出機構に関する研究
津野 洋宗宮 功柳瀬 仁志
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2000 年 13 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

 本研究では,土壌種および地質を考慮して選択した滋賀県の28地点の森林土壌のA層またはB層を対象に,土壌特性分析および異なるpHでの溶出実験により,酸性雨による土壌からの陽イオン溶出機構の解明を試みた。機構として陽イオン交換反応およびAl-腐植錯体の溶解反応について考察を試み,その結果,以下のことが示された。1)Al-腐植錯体を抽出測定するとされる0.5MCuCl2抽出Alは交換性Alの2倍以上存在し,交換性Alがほとんど存在しない土壌でも高い値を示したことから,酸性雨によりAlが溶出する可能性がある。2)交換性塩基およびAlの水素イオンとの交換に関するGapon係数KFBおよびKFAlを,水溶性[H+],[Ca2++Mg2+]および[Al3+],交換性Ca+MgおよびAl,ならびにCECから求めた。KFBの値は102~103(mol/L)-1/2,KFAlの値は102~105(mol/L)-2/3の範囲にあった。また溶出実験に基づいて計算したKFBの値は同一の土壌では平衡pHに拘らずほぼ一定で,水溶性イオン濃度に基づいたKFBの値と同程度であった。3)異なるpHの酸での溶出実験により,Alの平衡濃度はpHとBAR(土壌中のカルボキシル基のうちAlと有機錯体を形成している割合)を用いて経験的に次式で表された。pAl3+=(2.69xBAR-0.21)xpH+(-12.3×BAR+5.7)

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