本研究では,陽イオン交換反応およびAl-腐植錯体の溶解反応を考慮し,酸性雨による土壌溶出液のpHおよび陽イオン濃度を予測しうる数理モデルの作成を試みるとともに,そのモデルを利用して土壌の酸性化機構の考察を試みた。提示モデルは,滋賀県の森林土壌を対象とした模擬降雨実験データと対比することにより,酸性雨による土壌溶出液のpHおよび陽イオン濃度を予測しうることが検証された。またモデルを用いた感度解析の結果より,土壌反応に関与するパラメーターのうち酸と交換性Ca+Mgの交換に関するGapon係数KFB,および土壌中のカルボキシル基のうちAlと有機錯体を形成している割ることが示された。そして,モデル計算結果と土壌特性値との関係から判断して,pH4.7の酢酸-酢酸アンモニウム溶液抽出液中の(Ca+Mg+Al)および(Ca+Mg)/(Ca+Mg+Al)により,それぞれ酸性雨による土壌溶出液のpHおよび(Ca+Mg)/Al比の急激な減少がおこりうる地域をスクリーニングできることも示された。