抄録
本研究では,ぜロエミッションの観点から工業団地を構成し,さらに異業種間で排熱融通を行う場合について省エネルギー可能性評価を行う。最適化型モデルを用いて,今後の循環型社会の構築に対する指針を得ることを目的とする。 地球温暖化防止京都会議の結果を受け,省エネルギー対策の主軸としてヒートカスケーディングの重要性が高まっている。一方,廃棄物問題の切り札としてゼロエミッションが提唱され,産業廃棄物のマテリアルカスケーディングが脚光を浴びている。本研究では,両者を組み合わせた「ゼロエミッションを目指した工業団地のヒートカスケーディング」を提案する。この工業団地は,産業連関に基づき4系列12業種により構成され,系列内の工場はマテリアルにより結合している。系列外では排熱融通による結合が可能である。 省エネルギー可能性評価手法として,温度別に熱需給を線形制約条件式として記述し,システムコスト最小化を評価規準とした最適化型モデルを開発する。本モデルは,ガスタービン,ガスエンジン,熱駆動ヒートポンプ,アンモニア吸収冷凍機などを組み込んでおり,多様な熱利用形態が表現されている。 シミュレーションの結果,ゼロエミッションを目指した工業団地はヒートカスケーディングの導入インセンティブが高いことがわかった。これは,素材の再利用の際に高温の熱を必要とする傾向にあることに起因する。