抄録
産業廃棄物焼却炉から排出された焼却飛灰について溶出試験を行い,溶出液中の主成分元素から超微量成分元素の多元素測定を行った。測定には,高感度で多元素分析が可能である誘導結合プラズマ発光分析法および誘導結合プラズマ質量分析法を用いた。本法により,焼却飛灰溶出液中数十mg/Cm3 ~サブng/cm3 の9桁におよぶ濃度範囲で溶存している約50元素について,精度よく測定することができた。飛灰中各元素の溶出率は溶出操作後の溶出液のpHに大きく依存し,そのpH依存性は化学的性質が類似した元素ごとにそれぞれ類似した特徴を示すことが明らかとなった。また,酸化物が安定な元素は溶出率が低いという傾向も見出された。飛灰中元素の溶出挙動は,各元素の化学的性質や溶液中での安定性に加えて,飛灰中での存在形態に大きく依存していることがわかった。