抄録
既存の農業における温暖化影響の研究では,社会の基本的構造が将来においても変わらないという前提でその影響を推定してきた。本研究では,将来の経済成長・農業技術進歩・食料選好の変化等に伴う社会の基本構造の変化を前提として温暖化が食料供給に与える影響の大きさを推計した。分析の結果,将来は豊かで高い農業技術力を有している社会になっており,温暖化により食料飢餓といった深刻な事態はおこらないと予測された。温暖化による食料価格に与える影響を求め,家計に与える影響を見てみると,既存の研究の手法では特に発展途上国において家計を圧迫するという結果が出るが,将来の発展した社会を想定した場合はインドを除けば温暖化による影響は小さいということが予測された。