環境科学会誌
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松針葉の葉面主として気孔中における付着物質(粒子状物質)の分析
―松枯れの原因解明へのひとつのアプローチ―
遠藤 稔
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2003 年 16 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

 日本各地でマツの大量枯死,いわゆる「松枯れ」が顕在化して久しい。しかし,松くい虫対策を実施しても一向に終息していない。いまだに,そのメカニズムが解明されているとは言い難い。最近,松枯れと大気汚染(酸性雨・酸性霧,酸性降下物,粒子状物質等)との相関関係が指摘されてきている。そこで,静岡県沼津市及びその周辺を調査域として,松枯れが多く交通量の激しい道路沿いと,松枯れがさほど見られない交通量の少ない道路沿いのクロマツの葉をそれぞれ採取し,気孔の閉塞状況の観察とその閉塞物質を特定した。その結果,交通量の多い道路沿いの松葉の気孔は形態的にも異常をきたし,しかも気孔の前腔が粒子状物質で閉塞している場合が多かった。この粒子状物質にはジベンゾアントラセン,ベンゾピレン等が含まれていた。これらが原因となって,マツが衰弱し,殺虫効果のあるとされるマツの心材に含まれているスチルベン類(ピノシルビン)の分泌が減少するため,マツへのマツノザイセンチュウの侵入が容易になる機構を提案した。

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