環境科学会誌
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残留性有機汚染物質(POPs)による愛媛県在住初産婦の母乳汚染
國末 達也染矢 雅之渡部 真文豊田 卓枝黒田 優子長山 淳哉田辺 信介
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2004 年 17 巻 1 号 p. 37-48

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抄録

 1999年に愛媛県在住初産婦から採取した母乳について,残留性有機汚染物質(POPs)による汚染実態の解明を試みた。母乳から検出されたダイオキシン類の濃度は,13-92pgTEQs/9脂肪重当りの範囲内であり,その平均値は(36PgTEQs/9脂肪重当り),1998年に厚生省が調査した他府県初産婦の母乳レベルを上回る高い値を示した。母乳中のDDTs濃度(平均430ng/g脂肪重当り)もまた,他府県に比べ高い値を示し,HCHs(平均180ng/g脂肪重当り)及びCHLs(平均110ng/g脂肪重当り)の濃度も相対的に高値であった。また,母乳中のPCBs濃度(平均240ng/g脂肪重当り)は,1998年に調査された大阪府初産婦の母乳レベルとほぼ同等の高値を示した。これらの結果は,愛媛県内に比較的大きなPOPs汚染源が存在し,その曝露が在住者に及んでいることを示唆している。愛媛県の結果は,人間活動・産業活動の規模が小さい県にも有意なPOPs汚染源が存在し,ヒトや生態系の汚染が進行していることを暗示しており,行政による全国規模での母乳汚染実態調査の実施が望まれる。

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