環境科学会誌
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バイオアッセイと海洋環境管理
楠井 隆史
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2005 年 18 巻 2 号 p. 169-177

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抄録

 化学物質の生物影響を評価するバイオアッセイが海洋環境管理において果たす5つの役割についてその事例と問題点について論じた;1)化学物質の毒性評価と基準設定,2)海洋へ排出する点排出源の有害性評価と規制,3)海上輸送物質の毒性評価,4)浚渫物・底質,海洋投棄物の毒性評価,5)海洋環境モニタリング。近年,わが国では化学物質審査規制法への生態毒性試験の導入や水生生物保護のための水質環境基準が作成され,有害化学物質の海洋への流入が規制されることが期待されるが,不足している海産生物に対する毒性データを整備することが早急に求められている。一方,海外で実績のあるバイオアッセイによる排水規制や底質毒性評価に関してはわが国の実情に応じた適用が期待される。わが国では淡水種に比し,海産種を用いたバイオアッセイの標準法が少なかったが近年,充実が図られている。化学物質が拡散・希釈されている海洋環境のモニタリングには,感受性の高い生物種またはバイオマーカーなどを用いた試験法が求められているが,わが国でも取り組まれた先駆的な事例と現状の問題点を論じた。一方,地中海などでは環境モニタリングのためにバイオアッセイが適用され,さらに沿岸域の包括的な生態リスクアセスメントに発展させる動きがある。最後に,水産資源が重要なわが国においてバイオアッセイを日常的な海洋モニタリングとして定着させる重要性を指摘し,現状の問題点と課題について論じた。

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