環境科学会誌
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消費者の製品選択の意思決定解析への階層分析法の適用
平山 世志衣松野 泰也本藤 祐樹
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2005 年 18 巻 3 号 p. 217-227

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抄録
 本論文では,デジタル複合機の購入に関する消費者の意思決定プロセスを階層分析法(Analytic Hierarchy Process:AHP)により解析した。AHPは,意思決定における選択肢の重要度を,定量的に比較可能とするところに最大の特長がある。本分析では,デジタル複合機の購入という意思決定の階層構造を構成する評価基準に,コスト,性能,サービスに加えて,環境影響を取り入れた。これら4つの評価基準に関する消費者の重み付けは,グリーン購入ネットワーク会員を対象としたアンケート調査結果に従い,又対象製品の重み付けは公表されている製品情報に従って決定した。これら2種類の重み付けを元に,各消費者の対象製品に対する選好度を定量化した。このようにしてAHPにより推定された消費者の各製品に対する選好度を,アンケート調査で同時に得られた消費者の直感的な製品選択結果と比較することで,AHPによる選好度予測の妥当性を検討した。その結果,AHPにより予測された製品選好と,直感的な製品選択とが一致した消費者は全体の62.5%を占めた。消費者の重み付けには誤差が含まれていることを考慮して,その重み付けに±2%の変動を許容した場合には90%以上の一致が見られた。また,この解析結果を用いて,環境配慮型デジタル複合機を市場に導入する場合の消費者の選好を,価格に関して感度分析したところ,環境配慮型デジタル複合機が1割程度の価格差であれば,より廉価な環境非配慮製品よりも高い需要が見込まれる可能性が示唆された。
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