本研究は,有機野菜の販売可能性について,地域内有機物循環の意義と有機認証ラベルの重要性に注目して消費者選好分析を行ったものである。消費者アンケートデータから,コンジョイント分析および擬制的評価法(CVM)を応用して,地場野菜および有機栽培野菜等の付加的な価値を有する野菜について,ほうれん草1束を典型的な事例として評価した・その結果,地域内循環を志向した地場野菜は,環境負荷削減効果の価値を含めて,コンジョイント分析(RPLモデル)で9 .0円,CVMで17.2円の支払意思額が観察された。また健康や環境に配慮した有機栽培法による野菜は,コンジョイント分析で22.0円,CVMで19.1円の支払意思額が観察された。 同時に,コンジョイント分析により,地場野菜あるいは有機栽培野菜といったプレミアムの認証主体についての評価を行った。ここでは,農水省(JASラベル) ,NPO(仮想的な認証ラベル),スーパー(小売店独自のラベル)を想定した。結果は,NPO ,農水省,スーパーの順で評価され,近年の食品情報の表示問題を踏まえて考えると,信頼される認証主体が確実に保証することが求められていることが分かる。また,生産コストを考慮すると,消費者の有機栽培に対する支払意思のみでは普及は難しく,従来型の有機野菜販売方法での普及は困難であると判断されるが,地域内での有機物循環型野菜であるというプレミアム情報を確実に消費者に伝えるシステムの構築されれば,有機野菜の販売可能性は格段に高まることが分析結果から予想された。
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