環境科学会誌
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18 巻, 3 号
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  • 前田 章
    2005 年 18 巻 3 号 p. 207-216
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本論文では排出権取引制度において,異時点間の権利移転(バンキングやボローイング)の可能性が市場価格形成に及ぼす影響について考察する。とりわけ市場価格形成に際しての不確実性の果たす役割について分析する。異時点間の移転が可能になった場合,現時点排出権スポット市場と将来時点スポット市場は先渡し取引を介して互いにリンクすることになる。現時点スポット取引と先渡し取引との間の無裁定条件,および,先渡し取引と将来スポット取引との間のリスクを考慮した均衡条件の二つから,全ての市場価格とバンキング(またはボローイング)量が決定されることとなる。そこから,将来の経済環境に関する不確実性は現在スポット価格を上昇させる要因にも下落させる要因にもなりえるが,非常に大きな不確実性は必ず上昇要因になることが理論的に導かれる。その他,本理論モデルを用いれば技術進歩や市場参加者タイプの違いなどの影響も考察でき,政策担当者や政策意思決定者にとって重要な政策的含意を提示することができる。
  • 平山 世志衣, 松野 泰也, 本藤 祐樹
    2005 年 18 巻 3 号 p. 217-227
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本論文では,デジタル複合機の購入に関する消費者の意思決定プロセスを階層分析法(Analytic Hierarchy Process:AHP)により解析した。AHPは,意思決定における選択肢の重要度を,定量的に比較可能とするところに最大の特長がある。本分析では,デジタル複合機の購入という意思決定の階層構造を構成する評価基準に,コスト,性能,サービスに加えて,環境影響を取り入れた。これら4つの評価基準に関する消費者の重み付けは,グリーン購入ネットワーク会員を対象としたアンケート調査結果に従い,又対象製品の重み付けは公表されている製品情報に従って決定した。これら2種類の重み付けを元に,各消費者の対象製品に対する選好度を定量化した。このようにしてAHPにより推定された消費者の各製品に対する選好度を,アンケート調査で同時に得られた消費者の直感的な製品選択結果と比較することで,AHPによる選好度予測の妥当性を検討した。その結果,AHPにより予測された製品選好と,直感的な製品選択とが一致した消費者は全体の62.5%を占めた。消費者の重み付けには誤差が含まれていることを考慮して,その重み付けに±2%の変動を許容した場合には90%以上の一致が見られた。また,この解析結果を用いて,環境配慮型デジタル複合機を市場に導入する場合の消費者の選好を,価格に関して感度分析したところ,環境配慮型デジタル複合機が1割程度の価格差であれば,より廉価な環境非配慮製品よりも高い需要が見込まれる可能性が示唆された。
  • 田崎 智宏, 寺園 淳, 森口 祐一
    2005 年 18 巻 3 号 p. 229-242
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     家電リサイクル法制度の効力測定を試みた。これまでに指摘された家電リサイクル法の課題・問題点等の検討から,物質循環達成度,経済的効率性とマネーフロー,物質フローのカバー範囲,関係主体の行動変化の4つの基本軸を用いれば,量的な物質フローに係る力を概ね測定できると考えられた。また,効力測定の結果,以下の事項を実態面から定量的に明らかにした。物質循環達成度の軸については,再商品化は順調に行われているが,使用済み家電の引取・引渡状況は定期的にそれを確認するだけの情報収集体制になくその整備が求められた。経済的効率性の軸については,法施行前後でコストはやや増加しているが,再資源化や管理コストを考慮すると経済的効率性は同程度の水準を保っていると考えられた。また,再商品化等料金の差別化・価格競争といった消費者コスト削減のインセンティブは今のところ機能していなかった。物質フローのカバー範囲の軸については,家電リサイクル法が対象としているのは使用済み家電四品目の42%であり,残り34%は中古品として国外輸出されており,22%は不明分であった。また,産業廃棄物処理業者による処理実態は不明であり実態把握が望まれた。懸念されていた不法投棄件数増加への影響は大きくなかったが,持ち運びやすいテレビについては2年間で1.5倍の増加が認められ今後持ち運びやすい品目について後払い方式を採用することには十分な注意・検討が必要と考えられた。行動変化の軸については,後払い方式を採用した家電リサイクル法の施行が副次的に使える製品を捨てなくさせる効果をもたらしたが,得られた長期使用効果は+0.1年程度であり期待された発生抑制効果はあまりなかった。一方,法施行直前に駆け込み廃棄と買替を一時的に促進させた。小売業者では中古家電の安易な買い取り等が行われており対応策の検討が求められた。
  • 佐藤 真行, 坂上 雅治, 鈴木 靖文, 植田 和弘, 高月 紘
    2005 年 18 巻 3 号 p. 243-255
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,有機野菜の販売可能性について,地域内有機物循環の意義と有機認証ラベルの重要性に注目して消費者選好分析を行ったものである。消費者アンケートデータから,コンジョイント分析および擬制的評価法(CVM)を応用して,地場野菜および有機栽培野菜等の付加的な価値を有する野菜について,ほうれん草1束を典型的な事例として評価した・その結果,地域内循環を志向した地場野菜は,環境負荷削減効果の価値を含めて,コンジョイント分析(RPLモデル)で9 .0円,CVMで17.2円の支払意思額が観察された。また健康や環境に配慮した有機栽培法による野菜は,コンジョイント分析で22.0円,CVMで19.1円の支払意思額が観察された。 同時に,コンジョイント分析により,地場野菜あるいは有機栽培野菜といったプレミアムの認証主体についての評価を行った。ここでは,農水省(JASラベル) ,NPO(仮想的な認証ラベル),スーパー(小売店独自のラベル)を想定した。結果は,NPO ,農水省,スーパーの順で評価され,近年の食品情報の表示問題を踏まえて考えると,信頼される認証主体が確実に保証することが求められていることが分かる。また,生産コストを考慮すると,消費者の有機栽培に対する支払意思のみでは普及は難しく,従来型の有機野菜販売方法での普及は困難であると判断されるが,地域内での有機物循環型野菜であるというプレミアム情報を確実に消費者に伝えるシステムの構築されれば,有機野菜の販売可能性は格段に高まることが分析結果から予想された。
  • 岸本 充生, 小倉 勇
    2005 年 18 巻 3 号 p. 257-267
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     一般廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類対策にかけられた費用とその効果,および1g排出削減費用について,事後的な推計を行った。ダイオキシン類対策特別措置法の排出ガス規制が完全施行された直後の2002年12月から翌年1月にかけて,日本全国の一般廃棄物焼却施設から無作為に抽出した200施設に対して,対策の内容と対策にかけられた費用に関する聞き取り調査を行った。すでに緊急対策を行っていた10施設を除く190施設から情報を得た。ここから得られた設備投資費用と維持管理費用に,廃炉による費用と建設費用の増分を足すことによって総費用を求めた。設備投資費用の増分は,2,060億円である。これを割引率3%で1年あたりに換算すると189億円となり,維持管理費用の増分58億円と合わせて,1年あたりの費用増分は247億円となった。またこれに伴うダイオキシン類の排出削減量は249g/Yearであり,19排出削減費用は平均値で9 ,910万円となった。施設ごとに見ると非常に大きなばらつきが見られた。ここで得られた19排出削減費用は,緊急対策の29倍に上ることが分かった。また,サンプル施設の代表性が確認できたので,この結果を日本全国1,600の施設に当てはめると,設備投資費用の増分は1兆6500億円で,1年あたり1,510億円となり,維持管理費用の増分461億円と合わせて,1年あたりの費用増分は1,970億円となった。
  • 岩崎 みすず, 田結庄 良昭
    2005 年 18 巻 3 号 p. 269-274
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     大気中の粒子状物質の調査として,クロマツ葉に付着した粒子に着目した。自動車交通や工場などの産業活動が盛んな神戸市においてクロマツ苗木を設置し,葉表面の粒子状物質を電界放射型走査電子顕微鏡による個別粒子分析法を用いて,形態観察および化学組成を分析した。化学組成値をもとにクラスター分析を行った結果,粒子は5種類に分類された。それらは,(I)Si,Al,Mg,Ca,Feなどを含む粒子,(II)Siを多く含む粒子,(III)Na,Clから成る粒子,(IV)Caを多く含む粒子,(V)Feを多く含む粒子,の5つのクラスターである。粒子の化学組成と形態から,それぞれのクラスターにおける粒子の発生源の検討を試みた。土壌粒子や海塩粒子など自然起源の粒子や,鉄球粒子やブレーキ磨耗粒子などの人為起源の粒子が存在した。
  • 森 保文, Eric W. WELCH, 吉田 早苗
    2005 年 18 巻 3 号 p. 277-289
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     自主的な環境活動がはたして環境負荷を削減しうるのかについては議論のあるところである。本研究では,自主的管理である環境マネジメント手法の導入が事業所の環境負荷管理に与える影響を調べるために,事業所に対するアンケート調査およびインタビュー調査を実施し,統計的解析を実施した。経済理論や政策経済理論から,排出に関する自主基準設定などの環境負荷管理を導入する理由として,外部圧力,競争上の利点,社会的責任,組織的要因およびISOI4001を含む環境マネジメント手法を取り上げた。統計的解析によると,ISOI4001の導入は,エネルギー消費・廃棄物発生量,法的規制のある排出,DfE(環境適合設計)および仕入れ点検のいずれの環境負荷管理にも有意に働いた。特にエネルギー・廃棄物に対する効果は高かった。インタビュー調査によると,環境負荷管理の数値目標の多くはISO14001導入を契機として設定された。設定された数値目標は必ずしも簡単なものではなかったが,達成の方向にあった。以上から,ISO14001は環境負荷削減に有効な手法であり,その普及が望まれるが,規制排出については改善の余地があり,また広範囲の環境負荷管理の改善のためには他の手法の普及も必要と考えられた。
  • 増原 直樹
    2005 年 18 巻 3 号 p. 291-297
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     多くの自治体がISO14001の認証取得に取り組んでいるが,本稿ではそのメリット・効果,あるいはデメリットの考察を試みた。また,効果があるとすれば,その効果はISO認証取得のみの結果なのか,ISO認証取得以外の方法によっても同様の効果が得られないのかを検証した。 手法としては,全国の自治体に対する環境事業実施状況調査の結果を分析したのに加え,数量化皿類を用いて自治体における環境事業の実施パターン分析を行なった。 それらの結果,ISO認証取得自治体の事業実施状況は総じて優れているが,その要因は認証取得だけなのかどうかは不明であった。数量化m類を用いた分析から,環境事業の実施パターンには「課題深化系一標準装備系」と「農村地域系一都市地域系」の2軸が抽出された。市区町村ごとにサンプルスコアを算出し,ISO認証取得との関係を把握したところ,通常の自治体では「標準装備型」の割合が高くなるところ,ISO認証取得自治体の中では「課題深化型」の割合が高かった。 最後に,ISO未認証取得自治体であっても,「課題深化型」に属し,なおかつそのスコアが上位の自治体から東京都墨田区を選出し,ケーススタディを実施した。墨田区ではISO認証取得をめざしていないものの,1994年策定の「環境誘導指針」を根拠として,2000年に策定された「環境管理計画」に基づいて自主的な環境事業のPDCAサイクル構築に取り組んでいる。 ケーススタディの結果,ISO認証取得に取り組まなくても,エコオフィス活動の促進ができる可能性が確認され,またPDCAサイクルに基づく自治体運営が可能であることを示す取り組みがみられた。
  • 山本 芳華
    2005 年 18 巻 3 号 p. 299-307
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    全国自治体における環境マネジメントシステムの現状と課題―ISO14001取得自治体への全国調査から
  • 長谷川 紀子, 金子 宏, 玉浦 裕
    2005 年 18 巻 3 号 p. 309-315
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     大学における環境マネージメントシステム(EMS)の運用には化学物質管理情報の一元化が重要であり,東京工業大学では,化学物質の購入,使用,廃棄および環境中への排出に係わる様々な情報を総合的に一元管理すると共に,学内における化学物質に係る総合的な環境リスクマネジメントのためのEMSの構築とその運用を実施している。また,化学物質管理の実施に当たっては「環境」と「健康安全」とを分けて管理するのでは総合的なリスクマネジメントが達成できないため,本学では学内規則「東京工業大学における化学物質等の管理及び化学物質等の取扱いによる健康障害の防止に関する規則」を平成13年度に定めて,環境と健康安全とを一元化した管理を行っている。これらの管理で共通していることは,化学物質の購入,使用,廃棄のすべての段階を総合的に量,場所,人に対して,リアルタイムで正確にデータ管理することが基本となる。これらのデーター管理システムに基づいて,化学物質による「環境面」と「健康安全面」におけるリスクの洗い出し,改善計画,改善の実施,改善後の確認,更なるリスクの洗い出しというPDCAサイクルをスパイラル的にまわしていくことで,少量多種類の化学物質を使用する大学・研究機関におけるEMS並びにOSHMSは効果的に運用し得ると考えられる。この視点からEMSとOSHMSの統合的マネジメントの考え方について提言した。
  • 2005 年 18 巻 3 号 p. 336
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
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