環境科学会誌
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ISO14001認証取得と環境事業実施の関係についての一考察
増原 直樹
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2005 年 18 巻 3 号 p. 291-297

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抄録
 多くの自治体がISO14001の認証取得に取り組んでいるが,本稿ではそのメリット・効果,あるいはデメリットの考察を試みた。また,効果があるとすれば,その効果はISO認証取得のみの結果なのか,ISO認証取得以外の方法によっても同様の効果が得られないのかを検証した。 手法としては,全国の自治体に対する環境事業実施状況調査の結果を分析したのに加え,数量化皿類を用いて自治体における環境事業の実施パターン分析を行なった。 それらの結果,ISO認証取得自治体の事業実施状況は総じて優れているが,その要因は認証取得だけなのかどうかは不明であった。数量化m類を用いた分析から,環境事業の実施パターンには「課題深化系一標準装備系」と「農村地域系一都市地域系」の2軸が抽出された。市区町村ごとにサンプルスコアを算出し,ISO認証取得との関係を把握したところ,通常の自治体では「標準装備型」の割合が高くなるところ,ISO認証取得自治体の中では「課題深化型」の割合が高かった。 最後に,ISO未認証取得自治体であっても,「課題深化型」に属し,なおかつそのスコアが上位の自治体から東京都墨田区を選出し,ケーススタディを実施した。墨田区ではISO認証取得をめざしていないものの,1994年策定の「環境誘導指針」を根拠として,2000年に策定された「環境管理計画」に基づいて自主的な環境事業のPDCAサイクル構築に取り組んでいる。 ケーススタディの結果,ISO認証取得に取り組まなくても,エコオフィス活動の促進ができる可能性が確認され,またPDCAサイクルに基づく自治体運営が可能であることを示す取り組みがみられた。
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