環境科学会誌
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炭素クレジットが土地利用に与える影響の予測
木下 嗣基山形 与志樹岩男 弘毅
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2008 年 21 巻 1 号 p. 37-52

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抄録

 これまでの土地利用変化は,主に森林から農地への転換が行われてきた。しかし,温暖化対策として植林が認められ,炭素クレジットがつくと森林の生産的価値が上昇し,林地から農地への転換が減少することや,未利用地への植林が進むことが予想される。林地から農地への転換が減少すると,相対的に食糧生産を圧迫する可能性が指摘されているが,詳細な検討は行われていない。そこで本研究では,炭素クレジットの導入に伴う土地利用変化を予測する手法の開発と,炭素クレジットの導入の土地利用への影響を数値モデルを用いて行う。特に,全球規模で考えると人間活動に伴う土地利用割合が最も大きい,森林から農地への転換を考える。加えて,炭素クレジットによる未利用地への植林も考慮する。まず,将来シナリオの違いによる土地利用変化の違いから,土地利用変化の要因を探る。次に,炭素クレジットの導入により,土地利用がどのように変化するかを検討する。最後に炭素価格の将来的な予測が森林面積の増大に与える影響を検討し,今後の発展の方向性を考察する。本研究では,既往の土地利用予測モデルと異なり,メッシュで得られた農林業の生産性や,全球の土地被覆マップを利用する,メッシュベースの土地利用予測モデルである。将来しなりの違いによる土地利用変化の違いは,特にアフリカが敏感であることが示された。また,炭素クレジットの導入により,農地への転換が減少することや,炭素クレジットが今後上昇していくと,よりいっそう農地への転換が減少することが示された。

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