環境科学会誌
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わが国の水田圃場から発生する二酸化炭素,メタン量の推定
木村 眞人安藤 豊原口 紘〓
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1991 年 4 巻 1 号 p. 15-25

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抄録
 稲作期間土壌有機物の分解にともなって,わが国の水田土壌より発生する二酸化炭素とメタンの総量およびこれらガスの単位面積あたり発生量を,各県に分布する土壌統面積,代表地点土壌の作土深と化学性さらに稲作期間の気温より推定した。 すなわち,窒素の無機化量を土壌の化学性と稲作期間の気温から求め,10.8倍することにより炭素全無機化量を推定した。次いで,二酸化炭素とメタンへの分配割合を土壌の酸化容量(遊離鉄量)と還元容量(窒素無機化量)の比から求めた。 わが国の水田から発生する二酸化炭素,メタンの総量はそれぞれ炭素当たり3.8×106,9.6×104トンと見積もられ,灰色低地土壌統群から全発生量の二酸化炭素37%,メタン41%,次いでグライ土壌統群から二酸化炭素26%,メタン20%が発生していると推定された。 1ha当たり発生量では,二酸化炭素で黒ボク土壌統群(2.4トン/ha)が,メタンで黒ボクグライ土壌統群(73kg/ha)がそれぞれ最大値を示した。 メタン発生量は南に位置する地方ほど増加する傾向を示し,二酸化炭素に比べて稲作期間の気温および土壌群の種類の影響が顕著であった。 本実験で得られたメタン発生量は世界各地での観測結果の約1/10に相当する低い値であった。従って,本研究では考慮しなかった新鮮植物遺体や水稲根からの有機物の分泌がメタン生成に重要な役割を担っているものと推察された。
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