環境科学会誌
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亜セレン酸イオンとセレン酸イオンの吸着の特異性から見た土壌中のセレンの挙動に関する研究
佐伯 和利松本 聰
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1992 年 5 巻 2 号 p. 99-107

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抄録


セレンの主要形態である亜セレン酸イオン,セレン酸イオンの土壌に対する吸着性をpHの影響の観点から4種の土壌を用いて調べた。亜セレン酸イオン,セレン酸イオン共にpH低下につれて吸着量は増加した。セレン酸イオンの吸着量は亜セレン酸イオンに比べ,全pHではるかに少なかった。使用土壌のセレン吸着能は次のような順になった,黒ボク土>赤黄色土>> 灰色低地土>褐色森林土。この吸着能は,土壌の比表面積,リン酸吸着係数,しゅう酸可溶性アルミニウム量の増加と関係があった。亜セレン酸イオンの黒ボク土に対する吸着で,黒ボク土からのケイ素の放出が認められた。
連続抽出法を用いて,亜セレン酸イオン,セレン酸イオンの土壌からの脱着を調べた。吸着した亜セレン酸イオンの大部分(>60%)は,硝酸イオン,硫酸イオンでは脱着しなかった。反対に,吸着したセレン酸イオンの70%以上が硝酸イオン,硫酸イオンで脱着し,亜セレン酸イオンとセレン酸イオンの吸着機構の違いが示唆された。土壌中では,pHが低いほどセレンは動きにくく,セレン酸塩は亜セレン酸塩に比べ,かなり移動性に富むことがわかった。

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