1991年に日本国内で採取(一部市場で購入)したキノコ117試料について,137Cs,134Cs及び40Kを分析した。この結果を1989年と1990年に得た結果と合わせて考察したところ,全部で124種類(284試料)のキノコ中の137Csの濃度は,<3から16300 Bq/kg-乾燥重量(<0.4から1250 Bq/kg-湿重量)まで種類によって大きく異なった。これに対して,40Kの濃度は比較的一定であった。中央値は137Cs:53,40K:1180Bq/kg-乾燥重量であった。チェルノブイリ事故に起源をもつ134Csの濃度は全体的に低く,1991年には11試料のみで検出された。134Cs/137Cs比を用いて求めたチェルノブイリ事故起源の137Csの割合は低く,日本産のキノコ中の137Csは,主として1960年代に行われた核実験からのフォールアウトに起源を持つことが示唆された。採取したキノコを菌根菌と腐生菌の2つに分類したところ,前者の方が高い137Cs濃度を示した。日本人がキノコ(主として野生キノコ)を食べることにより137Csから受ける実効線量当量を試算したところ1.3×10-6Sv以下と非常に低い値であった。これは,自然界から受ける線量の約0.05%以下であった。