環境科学会誌
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7 巻, 1 号
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  • 熊本 雄一郎, 坪田 博行, 藤原 祺多夫
    1994 年 7 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     晩春の伊予灘,ひうち灘において海水中の溶存窒素,及び溶存リンの時間変動を観測した。伊予灘では,水温と塩分の分布から成層が確認され,溶存無機態窒素,溶存無機態リン(DIN,DIP)の濃度は,表層で小さく底層で高い鉛直分布を示していた。溶存有機態窒素・溶存有機態リン(DON,DOP)の濃度は,DIN,DIPの濃度より高かったが,その時間変動は小さかった。ひうち灘においては,成層は見られず,DIN,DIPは表層から底層までほぼ一定で,伊予灘と同にDON,DOPの濃度より低かった。一方,ひうち灘のDON,DOPの濃度は,伊予灘での測定結果とは対照的に,時間経過とともに大きく変動した。26時間の観測中に,高濃度のDON,DOPが二回観測され,その最高濃度は最低濃度よりおよそ一桁高かった。このようなDON,DOP濃度の時間変動が両海域において異なる要因として,潮汐との関係を考察した。すなわち,比較的水深の浅いひうち灘(水深22m)では,潮汐流に伴って巻き上げられた海底堆積物(再懸濁物)が,DON,DOP濃度に反映され,一方,比較的水深の深い,成層化している伊予灘(水深49m)では,そのような再懸濁物の影響がなかったと考察した。また,ひうち灘のDON/DOP比は外洋で観測された値に比べて小さく,過剰なリンがひうち灘の富栄養化に大きな影響を与えていることが推察された。これらの観測結果は,晩春の瀬戸内海において,DON,DOPはDIN,DIPを卓越して存在していること,水深等の地形的な要因がDON,DOP濃度の日変動に反映されることを示しており,富栄養化した瀬戸内海における窒素,リンの見積りには,DONとDOPの時間的に精密な測定が必要不可欠であることを明らかにした。
  • 深見 元弘, 名川 誠, 谷 享, 吉村 悦郎, 大久保 明, 山崎 素直, 戸田 昭三
    1994 年 7 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     重金属耐性菌Penicillium ochro-chloronATCC37641の過塩素酸抽出物中の糖ヌクレオチド含量に及ぼす培地中銅濃度の影響を調べた。銅高濃度培地培養菌体の抽出物中の全糖ヌクレオチド含量は,基本培地培養菌体のそれに対しはるかに少なかった。基本培地培養菌体の糖ヌクレオチドの主要構成成分として,UDP-N-アセチルグルコサミンとUDP-グルコースが同定されたが,銅高濃度培地培養菌体からはUDP-グルコースはほとんど見いだされず,UDP-N-アセチルグルコサミンが大部分を占めていた。細胞壁中のグルコサミン含量は,基本培地培養菌体より銅高濃度培地培養菌体の方が高かった。本菌が細胞壁に多量の銅を蓄積することを考え合わせると,キチンの前駆体であるUDP-N-アセチルグルコサミンの生産量が,他の糖ヌクレオチドほど培地中銅濃度によって影響を受けないことは,本菌の強い銅耐性と深い関係があると考えられる。
  • 田中 正宣, 神浦 俊一, 藁科 宗博, 宮崎 竹二, 鵜野 伊津志, 若松 伸司
    1994 年 7 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     15成分で構成した6発生源プロフィルを使い,Chemical Element Balance(CEB)法で求めた発生源寄与係数(CEB係数)を同一タイプのプロピレンを含む16成分からなる発生源プロフィルに適用して,道路近傍と大気モニタリングステーションでの16成分およびそれらの総濃度の算出を行った。それら総濃度と実際測定総濃度との間には若干の差(6発生源で説明されない濃度)が観察され,これに占めるベンゼン,トルエン,エチルベンゼンの比率は非常に高い値であった。これら3成分はアメリカで唯一報告されている工業廃水の発生源プロフィルを構成する芳香族炭化水素である。現在,日本では工業廃水の発生源プロフィルは提示されていないが,炭化水素へのより詳細なCEB法適用のためにはこのプロフィルの検討が必要であると考えられる。また,測定されるプロピレンの重量百分率は道路沿道では計算値のそれと大差のない値であったが,大気モニタリングステーションではそれらより非常に低い値を示した。 このことは自動車排出ガスの発生源近傍から大気モニタリングステーションに至る大気中でのプロピレンの速い消失を示唆するものと考えられる。
  • 坂村 博康, 宇都野 太, 小林 洋一, 安井 至
    1994 年 7 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     電気製品は様々な有害金属を含む多種類の部品で構成されているが,法的に規制されることなく廃棄されている。電気製品がゴミ捨て場に投棄された後,それらに含まれる有害金属の溶出状況はほとんど明らかにされていない。様々な条件下で電気製品中の有害元素の溶出挙動を調べることは環境に対して極めて重要なことと思われる。本研究では有害金属が電気製品中に含まれる割合を推算し,さらに仮想環境中(純水,塩水,酸)における部品ごとの金属溶出状況を調べた。電気製品に含まれる金属では,Pbの溶出量がもっとも大きく,特に酸による溶出が極端に大きいことが認められた。主なPb溶出の供給源ははんだであり,長期間にわたって酸性雨に曝されたとき,はんだからかなりのPbが溶出するであろうと推測した。Pb溶出防止対策として,Pbの回収,無害な物質による基板類のコーティング,使用するはんだ量を減らすなどが考えられる。Pb以外の溶出金属としては,Zn,Cu,Sbなどの溶出が目だっていた。
  • 中森 義輝, 美奈 領家, 天野 耕二, 福島 武彦, 内藤 正明
    1994 年 7 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     首都圏中小河川への汚濁負荷をマクロに予測するための一般化回帰モデルを提案する。まず,超楕円体法というクラスタリング手法によりデータ空間を分割し,変数間の部分線形構造を明らかにする。ついで,部分線形モデルの担当領域を表現するメンバシップ関数を同定する。いくつかの部分線形モデルをメンバシップ関数により統合する,いわゆるファジィモデルを構成することにより,流域の都市化シナリオに基づく水質の変化を予測する。
  • 劉 国林, 冨安 文武乃進, 尾張 真則, 二瓶 好正, 杉本 伸行, 内山 俊一
    1994 年 7 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本論文は,都市人工空間における浮遊粒子状物質について,試料捕集法の確立,少量の試料の分析結果による起源解析法について検討した結果を報告する。本研究では,労研TR個人サンプラーPS-47N型を用い,30分程度の試料捕集法を確立し,捕集試料をEPMAを用いて,粒別分析し,得られた粒子の組成データに基づいて,クラスター分析を行うことにより起源解析を行う起源解析法を確立した。典型的都市人工空間である地下鉄ホーム,地下鉄駅出入口付近,及びそれらの中間的レベルの3カ所で捕集した試料について起源解析を行い,起源種の同定,外気の影響と密閉性の関連を検討した結果,ホームでは鉄粒子が多く,地下鉄駅出入口付近で捕集した試料では,沿道粒子と似たような起源をもつことが分かった。
  • 深見 元弘, 名川 誠, 秋山 幸雄, 吉村 悦郎, 大久保 明, 山崎 素直, 戸田 昭三
    1994 年 7 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     培地中の銅濃度によって生産量に影響を受ける高分子化合物が,重金属耐性菌Penicil lium ochro-chloron ATCC36741の過塩素酸抽出物中に見出された。カラムクロマトグラフィーと超遠心分析の結果,分子量は2,000,000以上と推定された。GLCの結果は,この物質がグルコースのみからなる多糖であることを示していた。13C-NMRとGLC-MSの結果は,この物質がα 〔1→4〕結合とα 〔1→6〕結合を13:1の割合で含むことを示していた。以上のことから,この高分子化合物はα 〔1→4〕結合を主鎖とし,α 〔1→6〕結合を側鎖とする分子量2,000,000以上の多糖であることが分かった。
  • 吉田 聡, 村松 康行
    1994 年 7 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー

    1991年に日本国内で採取(一部市場で購入)したキノコ117試料について,137Cs,134Cs及び40Kを分析した。この結果を1989年と1990年に得た結果と合わせて考察したところ,全部で124種類(284試料)のキノコ中の137Csの濃度は,<3から16300 Bq/kg-乾燥重量(<0.4から1250 Bq/kg-湿重量)まで種類によって大きく異なった。これに対して,40Kの濃度は比較的一定であった。中央値は137Cs:53,40K:1180Bq/kg-乾燥重量であった。チェルノブイリ事故に起源をもつ134Csの濃度は全体的に低く,1991年には11試料のみで検出された。134Cs/137Cs比を用いて求めたチェルノブイリ事故起源の137Csの割合は低く,日本産のキノコ中の137Csは,主として1960年代に行われた核実験からのフォールアウトに起源を持つことが示唆された。採取したキノコを菌根菌と腐生菌の2つに分類したところ,前者の方が高い137Cs濃度を示した。日本人がキノコ(主として野生キノコ)を食べることにより137Csから受ける実効線量当量を試算したところ1.3×10-6Sv以下と非常に低い値であった。これは,自然界から受ける線量の約0.05%以下であった。
  • 竹本 和彦
    1994 年 7 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 1994/01/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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