抄録
本研究は,食品の味が咀嚼運動に及ぼす影響を明らかにする目的で,22~28歳(平均25.8歳)の健常男性16名における苦味の程度が異なるグミゼリー咀嚼時の咬筋筋活動を検討した.グミゼリーの苦味の程度は,苦くない,わずかに苦い(0.016%キニーネ添加),苦いグミゼリー(0.032%キニーネ添加)の3種類とし,それぞれを主咀嚼側で20秒間咀嚼させた時の主咀嚼側の咬筋筋活動を多用途計測装置(EMG)で記録した.分析は,咬筋筋活動を観察後,咬筋筋活動の持続時間,間隔時間,サイクルタイム,全サイクルの積分値と1サイクル当りの積分値をそれぞれ算出し,苦味の程度間で比較した.咬筋筋活動の持続時間,間隔時間,サイクルタイムは,いずれも苦くないグミゼリー咀嚼時が最も短く,わずかに苦いグミゼリー咀嚼時,苦いグミゼリー咀嚼時の順に延長する傾向を示し,苦くないグミゼリー咀嚼時と苦いグミゼリー咀嚼時との間に有意差が認められた.また,咬筋筋活動の総積分値と1サイクル当りの咬筋筋活動の積分値は,苦味の程度間に有意差が認められなかった.これらのことから,食品の味の違いは,咀嚼リズムに影響を及ぼすが,咬筋筋活動量には,影響を及ぼさないことが示唆された.