日本顎口腔機能学会雑誌
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咀嚼は脳トレになるか?
川島 隆太
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18 巻 (2012) 1 号 p. 1-5

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抄録

脳機能を維持・向上する,精神的な健康感を向上するための手法を開発研究するにあたり,我々は,認知神経科学の観点から,大脳の前頭前野の機能に注目をしている.人間の前頭前野は,もっとも高次な認知機能を司る場所として知られており,健全な社会生活を送るために必要な能力が宿っており,特に実行機能と呼ばれている機能(将来の計画・企画や意思決定,行動の選択や統制などの基幹となる機能)を持つ.我々は,60歳代くらいになると,心身のさまざまな機能の低下を自覚する.しかし,こうした心身機能,特に前頭前野が司る認知機能の低下は,20歳代30歳代からすでに始まっていることが知られている.この前頭前野が司る認知機能の低下に対して,最近の認知心理学研究で,認知トレーニングと呼ばれる方法が有効であり,特にワーキングメモリートレーニングによって,さまざまな前頭前野の認知能力を向上させることが可能であること,前頭前野を中心とした大脳の構築に可塑的な変化が生じることなどが証明されている.日常生活で行われている咀嚼運動自体には作動記憶トレーニングとしての要素はほとんどない.実際に機能的MRIによってさまざまな咀嚼運動と関連する脳活動を計測したが,多くの活動は運動・感覚野に限局し,前頭前野には有意な活動を見出すことはできなかった.したがって我々の研究仮説の延長上で咀嚼と脳を鍛える効果を結びつけるのは難しいと考えている.

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