日本顎口腔機能学会雑誌
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特別講演
メリハリをつけて歩くインターバル速歩-その方法と効果のエビデンス-
能勢 博
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2012 年 19 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

ヒトの体力は20歳台をピークにその後10歳加齢するごとに5-10%ずつ低下する.そしてピーク時の25%以下になると要介護となり,自立した生活ができなくなる.この体力の低下は主に老人性筋委縮(サルコペニア)と呼ばれるもので,皮膚にしわが寄ったり,頭の毛が薄くなったりするのと同様,加齢遺伝子の仕業と考えられている.大切なことは,この体力の低下と医療費の増加との間に高い相関があることである.最近の運動生理学では,加齢による骨格筋の低下によって,全身の慢性炎症がおこり,その結果,高血圧,糖尿病,肥満などの生活習慣病だけではなく,うつ病やがんを引き起こすと考えられている.したがって,これらの疾患を予防するには,加齢によって失われる体力を「運動トレーニング」で防ぐことが最も効果的である.運動生理学における運動トレーニングの基本は,個人の最大体力の70%以上の運動を1日30分以上,週4日以上実施することである.しかし,そのためには専門の体育施設に通い,専門のスタッフの指導を受けなければならず,一般に普及しにくい.そこで,我々は,より安価で容易に中高年が体力向上を達成できる個別運動処方システムを開発した.この特徴は,1)インターバル速歩,2)携帯型カロリー計(熟大メイト),3)遠隔型個別運動処方システム(e-Health PromotionSystem)である.これによって,体力向上,生活習慣病症状改善,うつ指標の改善,医療費の削減などの効果のあることを5, 200名の中高年者で明らかにした.今後,同システムが歯科予防領域にも浸透することを期待している.

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© 2012 日本顎口腔機能学会
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