抄録
我々は,顎運動データから「嚙みやすさ」を客観的に評価する方法について検討している.咀嚼時の食物粉砕に中心的役割を果たしている部位を評価する方法として主機能部位という概念がある.本研究では主機能部位でのストッピング嚙みしめ時において,運動論的顆頭点での顆頭運動の運動論的特徴について検討することを目的とした.
研究の主旨に同意が得られた顎口腔機能に自覚的・他覚的に異常を認めず,個性正常咬合を有する本学の教職員ならびに学部学生5名(男性3名,女性2名,年齢29.1±9.0歳)を被験者とした.左右側でのストッピング一回嚙みしめ時の6自由度顎運動と咀嚼筋活動をそれぞれ5回ずつ同時測定した.全被験者の主機能部位は第一大臼歯であった.
ストッピング嚙みしめにおいて,作業側咬筋活動開始時に作業側顆頭は平衡側顆頭よりも有意に咬頭嵌合位に近い位置に復位していた.作業側咬筋最大筋活動時には両側顆頭ともに咬頭嵌合位に近い位置に復位していたが,平衡側顆頭は上下的には,咬頭嵌合位の顆頭位より上方へ偏位していたことから,平衡側顆頭が作業側顆頭に比べて関節面に咀嚼力が加わっていると考えられる.
今回の研究結果から,主機能部位でのストッピング嚙みしめ時の運動論的特徴は,これまでに報告された咀嚼時の下顎運動と同様の傾向を示しており,主機能部位での嚙みしめは咀嚼の評価を行うのに簡便で有効な手段であることが運動論的にも確認できた.