日本顎口腔機能学会雑誌
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顎運動を攻略するための第一歩 −CAD/CAM時代に向けて−
坂東 永一鈴木 善貴藤村 哲也田島 登誉子大倉 一夫吉原 靖智小澤 彩新開 瑞希谷脇 竜弥松香 芳三
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2023 年 29 巻 2 号 p. 75-90

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抄録

顎運動は立体である下顎が空間内を前後・左右・上下の3方向へ並進するとともに,その3方向の軸を中心に回転する複雑な運動である.上顎から観察した下顎の動きを下顎運動,逆に下顎から観察した上顎の動きを相補下顎運動という.相補下顎運動は切歯指導板が下顎についている咬合器やCondylar型咬合器のように,臨床で頻繁に使用されているにも拘らず,下顎運動と明確に区分して認識されることは少ない.

本稿では,水平面におけるゴシックアーチ描記と矢状面における限界運動軌跡や,咬合器の構成と顎運動の比較などを取り上げて,下顎運動と相補下顎運動の関係性や違いを正しく理解できるように整理している.また,押し寄せるCAD/CAM時代に顎運動を数値モデルとして再現できるよう,下顎運動のモデルである全運動軸,相補下顎運動のモデルである相補全運動軸,下顎運動と相補下顎運動に共通なモデルである顎間軸についての概念を示し,実際の顎運動の測定データから,読者が自ら任意の位置における下顎運動路や相補下顎運動路,そしてそれぞれの軸を算出できるように,Excelを用いた算出手順を丁寧に記述し,顎運動の解析を体験できるよう工夫している.

顎運動は3方向への並進運動と回転運動からなる6自由度運動であるが,本稿では2自由度顎運動と3自由度顎運動を中心に説明しており,これから学ぶ読者が顎運動を攻略するための第一歩となることを望んでいる.

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© 2023 日本顎口腔機能学会
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