日本顎口腔機能学会雑誌
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29 巻, 2 号
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特集記事
  • 坂東 永一, 鈴木 善貴, 藤村 哲也, 田島 登誉子, 大倉 一夫, 吉原 靖智, 小澤 彩, 新開 瑞希, 谷脇 竜弥, 松香 芳三
    2023 年 29 巻 2 号 p. 75-90
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    顎運動は立体である下顎が空間内を前後・左右・上下の3方向へ並進するとともに,その3方向の軸を中心に回転する複雑な運動である.上顎から観察した下顎の動きを下顎運動,逆に下顎から観察した上顎の動きを相補下顎運動という.相補下顎運動は切歯指導板が下顎についている咬合器やCondylar型咬合器のように,臨床で頻繁に使用されているにも拘らず,下顎運動と明確に区分して認識されることは少ない.

    本稿では,水平面におけるゴシックアーチ描記と矢状面における限界運動軌跡や,咬合器の構成と顎運動の比較などを取り上げて,下顎運動と相補下顎運動の関係性や違いを正しく理解できるように整理している.また,押し寄せるCAD/CAM時代に顎運動を数値モデルとして再現できるよう,下顎運動のモデルである全運動軸,相補下顎運動のモデルである相補全運動軸,下顎運動と相補下顎運動に共通なモデルである顎間軸についての概念を示し,実際の顎運動の測定データから,読者が自ら任意の位置における下顎運動路や相補下顎運動路,そしてそれぞれの軸を算出できるように,Excelを用いた算出手順を丁寧に記述し,顎運動の解析を体験できるよう工夫している.

    顎運動は3方向への並進運動と回転運動からなる6自由度運動であるが,本稿では2自由度顎運動と3自由度顎運動を中心に説明しており,これから学ぶ読者が顎運動を攻略するための第一歩となることを望んでいる.

臨床報告
  • Rio Hirabayashi, Yuko Shigeta, Tomoko Ikawa, Shinya Hirai, Shuji Shige ...
    2023 年 29 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    Abnormal paths of the incisal point would have shown the presence of a temporomandibular joint dysfunction (TMD). However, it is difficult to estimate the condylar movement based on the incisal movement. There was no functional or biomechanical basis for clinically using the maximum opening distance as an indicator of condyle gliding. Therefore, it is necessary to use a six-degree-of-freedom jaw tracking device to observe and assess the condylar movement.

    The purpose of this study was to propose a new analytical method to evaluate mandibular functions by observing TMJ kinematic parameters in a post-treatment TMD patient.

    A 56-year-old male TMD patient had mouth opening limitation with configuration change in his left condyle. To assess jaw function of the post-treatment TMD patient, his jaw movement characteristics were compared to those of a healthy volunteer with the almost same range of mouth opening.

    An upper incisal point and a left arbitrary condyle axis point (L-AP) were used as reference points. In addition, two points (L-rAP and L-CP) were used to analyze the left condylar movement. The L-rAP was below the L-AP with the same range of and opposite direction of movement in antero-posterior direction. The L-CP was the midpoint between the L-AP and L-rAP. Movement trajectories of reference points were investigated.

    The trajectory of the left condylar movement in the volunteer was a downward-convex curve, whereas that in the TMD patient was an upward-convex curve. In the volunteer, the ratio of rotational and translational movements was appropriately coordinated during opening-closing movement. In contrast, in the TMD patient, the rotational movements around the L-CP mainly occurred. This rotational movement caused the forward movement of the left condyle, thus avoiding the left side deviation of the mandible and the limitation of the opening. The adaptive changes in jaw movement characteristics were occurred in the post-treatment TMD patient. These findings suggested that, in terms of kinematics, the L-CP was a reference point that resembles the least motion axis (LMA) rather than the instantaneous center of rotation.

    As a result of this study, it is suggested that the mandibular TMJ kinematic parameters in the TMD patient were different from those in the volunteer, and it was suggested that establishing three reference points, including a point located away from the condylar point, was as useful as the method using the LMA for analyzing the movement of the entire mandible and for identifying the characteristics of the condylar movement.

学術大会抄録
  • 佐藤 理加子, 兒玉 匠平, 大川 純平, 村上 和裕, 堀 一浩, 小野 高裕
    2023 年 29 巻 2 号 p. 102-103
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    舌は緻密でダイナミックな動きにより様々な機能を生み出し,咀嚼・嚥下・構音において重要な役割を担っているが,口腔内にあるため直接運動する様子を観察することはできない.我々は舌運動モーションキャプチャシステム(電磁アーティキュログラフ,以下EMAとする)と舌圧測定の同時測定により,水嚥下時やとろみ水嚥下時の舌運動と舌圧発現様相の特徴及び双方の関係性について研究を行い,報告してきた1, 2)

    一方で,咀嚼時の顎運動の解析や舌圧測定3)は現在まで様々な研究がされてきたものの,舌運動の詳細な解析はこれまでほとんど行われておらず,舌運動と顎運動との関係性についても不明な点が多い.

    そこで今回我々は,本システムを用いて咀嚼時の詳細な舌運動を明らかにするため,同時測定を記録し解析を試みた.本研究の目的はEMAを用いて咀嚼時における舌運動と顎運動との関係を明らかにすることである.

  • 伊藤 有希, 田中 恭恵, 大道寺 明也, 服部 佳功
    2023 年 29 巻 2 号 p. 104-105
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    食品のテクスチャーは,食べ物のおいしさに加えて,摂食嚥下の安全性に関わる重要な要素である.テクスチャーの変化により,咀嚼時間や嚥下時間が変化する1)ことは知られているが,テクスチャーを捉える感覚の低下が摂食嚥下動作に及ぼす影響についてはよく調べられていない.

    本研究では,とろみとざらつきの程度を識別する能力により口腔テクスチャー感覚を評価し,それらと,マッシュポテト摂取時に表面筋電図によって計測される咀嚼・嚥下のパラメータの関連を調べることで,口腔テクスチャー感受性が摂食動作に及ぼす影響を明らかにする.

  • 川田 里美, TiTi Chotirungsan , 筒井 雄平, 真柄 仁, 辻村 恭憲, 井上 誠
    2023 年 29 巻 2 号 p. 106-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    摂食嚥下障害において,嚥下惹起遅延は主たる病態のひとつである.過去の報告では,麻酔下ラットにおける塩化カリウム(KCl)の喉頭滴下による嚥下反射誘発効果は塩化ナトリウム(NaCl)に比して効果的である1),ヒトではKClを適用した時の随意嚥下間隔時間はNaClよりも短かった2)と報告している.しかし,カリウムイオンがどのように嚥下開始に関与しているかは明らかではない.本研究では,生理学的手法を用いてカリウムイオンが嚥下開始に及ぼす影響について,ラットを対象として評価した.

  • 中嶋 優太, 辻村 恭憲, 吉原 翠, 那小屋 公太, 真柄 仁, 井上 誠
    2023 年 29 巻 2 号 p. 108-109
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    高齢者の多くは抗コリン作用をもつ薬剤を服用している.その副作用として唾液分泌抑制に伴う口腔乾燥や消化管運動低下が挙げられており,摂食嚥下機能への影響が懸念される.臨床的に抗コリン薬と摂食嚥下障害との関連は認識されている1)ものの,嚥下機能に対する直接的な影響については未だ明らかにされていない.

    本研究は,ムスカリン性アセチルコリン受容体(mACh-R)遮断薬であるアトロピンが嚥下誘発に与える影響を検証し,そのメカニズムを解明することを目的とした.

  • 宮崎 透奈, 鈴木 達也, 長谷川 陽子, 吉村 将悟, サンタマリア マリアテリース , 堀 一浩, 山村 健介, 小野 高裕, 小野 弓 ...
    2023 年 29 巻 2 号 p. 110-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    近年の研究から,ガムチューイングなどの咀嚼活動が一時的に認知機能を向上させることや,咀嚼機能が維持されている高齢者ほど認知機能障害のリスクが少ないことは知られている1)が,日常生活における積極的な咀嚼行動の増加が認知機能を向上させられるかについてはまだ明らかではない.そこで,本研究は若年者を対象とし,ウェアラブルデバイスを用いて1か月間咀嚼行動の変容を促した場合の咀嚼行動,認知機能,認知課題実行中の脳活動の変化についてランダム化比較試験により検討した(新潟大学倫理審査委員会承認2020-0478, 明治大学理工学部人を対象とした実験研究に関する倫理委員会承認 理工安倫22第558号, 日本学術振興会科学研究費20H03877).

  • 鈴木 達也, 宮崎 透奈, 長谷川 陽子, 吉村 将悟, サンタマリア マリアテリース , 山村 健介, 小野 高裕, 小野 弓絵
    2023 年 29 巻 2 号 p. 112-113
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    機能的近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy:fNIRS)は近赤外光が皮膚や頭蓋骨などの生体組織を透過する性質を利用して大脳皮質の血流変化(ヘモグロビン濃度変化)を評価する非侵襲的脳機能計測法である.fNIRSは計測時の姿勢や体動への制約が比較的少ないため,歯科分野においては顎口腔運動時の脳機能計測への応用が試みられてきた1).しかし,頭皮上に光プローブを設置する原理上(図1),運動に伴う皮膚血流変化によるアーチファクトの混入が結果の解釈を困難にしていた.近年ではこれらの皮膚血流ノイズを除去する先進的な信号処理手法が提案されてきている.

    本研究では,皮膚血流増加が重畳しやすいガム咀嚼課題中のfNIRSデータを対象とし,全ての計測信号に共通して重畳する皮膚血流の影響を除去する空間フィルタ法2)を適用してその妥当性を検討した結果を報告する.

  • 長谷川 陽子, 吉村 将悟, 鈴木 達也, 白水 雅子, サンタマリア マリアテリース , 山村 健介, 小野 弓絵, 小野 高裕
    2023 年 29 巻 2 号 p. 114-115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    「おいしい」と感じる食事は脳を活性化させ,幸福感を生み出し,体に良い影響を与えると考えられている.日常的な食事では「おいしい,好き」と感じる快情動と,「まずい,嫌い」と感じられる不快情動とが混在し,人によって「おいしさ」の感じ方は様々である.前頭皮質は,経験依存的な風味処理の中枢を担っているだけでなく1),食経験や味嗅覚への記憶によって活動性が影響され,主観的な快楽経験にも深く関わっていることが知られている.

    我々は,機能的近赤外分光法(functional near-infrared spectroscopy:fNIRS)による脳神経活動の計測から,咀嚼時の情動変化と生体反応との関連性に注目して研究を行ってきた.先行研究では,ガムの味・香りが「おいしくない」と感じるガムを咀嚼した方が,「おいしい」と感じるガムより,左前頭極・背外側前頭前野において有意に脳血流変化が大きかった2).一方で,同じ硬さ・容量の被験食品(ガム)を使用したため,本来の個人の嗜好が考慮されておらず,被験食品ではなく,「おいしくない」ガムを「おいしい」と官能試験にて判定してしまう被験者がいる等,個々の嗜好に併せた情動変化を評価出来なかった.

    そこで本研究では,被験食品を各人の食品嗜好にあわせたものを準備し,おいしいもの/おいしくないものをそれぞれ食べた際の脳血流変化をfNIRSで評価し,摂取食品に対する情動変化が脳神経活動に与える影響について明らかにすることを目的とした(新潟大学倫理審査委員会承認2019-0216).

  • 松永 知子, 森田 匠, 平場 勝成
    2023 年 29 巻 2 号 p. 116-117
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    咀嚼運動はリズミカルな筋の協調運動であり,そのリズムは脳幹に存在するパターンジェネレーターによって中枢性に形成される1).咀嚼中は口腔内に摂取した食物の物性に応じて末梢からの感覚入力による調整を受けるが,この顎運動の制御に関与する顎反射の一つである開口反射には低閾値刺激で誘発されるものがある.低閾値開口反射は咀嚼運動中に誘発されると,フェーズ依存的に閉口相と咬合相で抑制されることが知られている2).我々は以前より,この低閾値開口反射の変調が咀嚼サイクル中の咬合接触直前の顎位(閉口相の後期)で最も強く抑制されることを報告してきた.しかし,この顎位に依存した強い抑制が咀嚼開始後にどのタイミングから生じるのかという点は未だ明らかではない.

    仮に,咀嚼運動開始直後の,咬合接触が生じる前から強い抑制が生じるのであれば,この顎位に依存した開口反射の強い抑制には,咬合接触による末梢からの入力が必要ではないことを意味する.一方,数サイクル咀嚼したのちに強く抑制が開始されるか,サイクルを重ねるごとに徐々に抑制されていくのであれば,咬合接触による末梢からの感覚入力に基づいて最も強く開口反射が抑制される顎位が決定されていることを示唆する.

    本研究の目的は,安静時と咀嚼様運動中に下歯槽神経刺激によって誘発される開口反射応答を,刺激開始後1発目および咀嚼開始1サイクル目からそれぞれを順に解析し,咀嚼開始後の開口反射の変調が何サイクル目から開始されるのかを明らかにすることである.

  • 筒井 雄平, 辻村 恭憲, Titi Chotirungsan , 真柄 仁, 井上 誠
    2023 年 29 巻 2 号 p. 118-119
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    嚥下反射誘発時には,脳幹の中枢性嚥下パターン発生器の活性化に伴い多くの筋が動員されて一連の運動が認められる.その中に舌骨上筋群が含まれていることは良く知られているが,顎二腹筋後腹Posterior belly of digastric muscle(Post Dig)の活動に関する記述はほとんどない.Post Dig は顔面神経支配とされ,その運動核はaccessory facial nucleus(Acs7)に位置するという1-3).本研究の目的は,嚥下中のPost Digの筋活動を記録すること,中枢における運動ニューロンの所在と嚥下中の活動様相を探ることである.

  • T. CHOTIRUNGSAN, J. MAGARA, T. TSUJIMURA, M. INOUE
    2023 年 29 巻 2 号 p. 120-121
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    Digastric muscle (Dig) is composed of anterior belly (Ant-Dig) and posterior belly (Post-Dig) innervated by different motor neurons. Ant-Dig reflex is known to be a jaw-opening reflex and numerous studies have reported modulation of Ant-Dig reflex responses in functions (Lund and Olsson, 1983; Yamamura et al., 1998; Yamada et al., 2013). However, the Post-Dig reflex and its contribution to orofacial function have never been investigated before.

    This is the first time to reveal the nature and modulation of Post-Dig reflex during rest, chew, lick, and swallow. We investigated how the reflex was evoked and modulated in the functions.

  • 木村 慧, 榎本 崇宏, 後藤 祐美, 鈴木 善貴, 新開 瑞希, 柴垣 あかり, 松香 芳三
    2023 年 29 巻 2 号 p. 122-123
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    近年リハビリテーションや在宅医療において摂食嚥下障害に対する関心が高まっている.摂食嚥下障害を診断するために嚥下造影検査(VFSS:Video-Fluoroscopic Swallow Study)や嚥下内視鏡検査(FEES:Fiberoptic Endoscopic Examination of Swallowing)が行われるが,侵襲的な検査であり,高価な計測機器や専門技術が必要とされている.非侵襲的なスクリーニング法として,頸部聴診法に基づく嚥下障害の評価が行われているが,評価者の経験や主観に依存する.近年では,嚥下音は咽喉マイクロフォン等を用いて録音でき,簡便な嚥下障害のスクリーニングのために機械学習に基づく嚥下音検出法が提案されている2, 3).しかしながら,我々の調査によれば,音響特徴量のMFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)は単独で使用され,単一の機械学習モデルが使用されてきた.そこで我々は複数の特徴量並びに複数の機械学習手法を用いた嚥下音自動検出システムにより,更なる性能向上を目指せるものと考えた.本研究では,ゼリー嚥下時において獲得された嚥下音データベースをもとに,提案する複数の機械学習手法を用いた嚥下音自動検出システムの有効性を検討することを目的とした.

  • 皆木 省吾, 兒玉 直紀, 中原 龍一, 尾崎 敏文, 古寺 寛志, 北川 佳祐, 萬田 陽介, 田中 祐貴, 杉本 皓, 森 慧太朗, 山 ...
    2023 年 29 巻 2 号 p. 124-125
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    睡眠時のみでなく覚醒時の咀嚼筋活動も顎口腔系に及ぼす影響が大きいことが最近の研究によって明らかにされつつある1-3).これらの詳細かつ客観的な特徴を解析するためには,ブラキシズムやTCHに関するアンケート調査ではなく筋電図記録に基づく解析が重要であると考えられる.

    一方,我々の日常生活環境に存在する電子機器は益々増加しており,それらが発する電磁波に由来するノイズ信号がどの程度筋電図記録に影響を及ぼすかについての情報は不足しているのが現状と考えられる.そこで本研究は,覚醒時の日常生活環境において筋電図記録に混入し得るノイズ信号の特徴に関する情報を収集することを目的とした.

  • 岡安 一郎, 小見山 道, 鮎瀬 卓郎
    2023 年 29 巻 2 号 p. 126-127
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    口腔灼熱痛症候群(burning mouth syndrome:BMS)の病態は不明だが,心理社会的因子の他,神経障害性疼痛との関連が示唆されている1).Watanabeら2)は,定量的感覚検査(quantitative sensory testing:QST)による感覚閾値の測定結果から,BMSにおける神経障害性疼痛の関与を示唆した.一方,Hondaら3)は,QSTと心理テストの結果から,神経の機械的感受性より,心理社会的要因がBMSの病態に重要な役割を担っているとの見解を示している.

    BMSの治療法は未確定だが,カプサイシンやリドカインによる局所薬物療法の有効性が示唆されている1).それらの有効性を検討するために,前段階として,健常者を対象とした先行研究があるが4),われわれはリドカインに着目し,研究を行ってきた5)

    BMSの疫学的特徴は,患者の多くが中高年女性である1).そのような背景を踏まえると,研究の前段階としては,これまでのように,若年の健常女性だけでなく,中高年,特に,好発年齢である50代の健常女性を対象とし,若年女性との比較を行うことが重要であると考えた.

    本研究は,年代の異なる女性(50代と20代)の舌の感受性と,リドカインによる反応を,QSTで評価し,両者を比較検討した.

  • 新開 瑞希, 中川 悠, 馬場 政典, 松田 有加子, 佐藤 理加子, 高野 日南子, 鈴木 拓, 真柄 仁, 井上 誠
    2023 年 29 巻 2 号 p. 128-129
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    加齢に伴う口腔内の生理学的変化の一つとして,唾液分泌量の減少が挙げられる.我々は,本学会第66回,67回学術大会において,唾液分泌量の減少が摂食嚥下動態に及ぼす影響について報告した.今回,健常成人を対象に,塩酸ピロカルピン誘発性の唾液分泌量の増加が咀嚼嚥下に及ぼす影響を検証した.

  • 李 宙垣, 渡辺 崇文, 松岸 諒, 喜田 悠太, 板 離子, 津賀 一弘, 兒玉 匠平, 大川 純平, 堀 一浩
    2023 年 29 巻 2 号 p. 130-131
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    舌は,咀嚼や嚥下,構音などの機能を担っており,嚥下時には,口蓋と接触することで食塊を咽頭へ送り込む役割を果たす1).また,嚥下障害を呈する者には,誤嚥のリスク低減のために液体へのとろみ付けや一口量の調整が行われている.しかしながら,液体の物性や一口量の違いによって嚥下時の舌圧がどのように変化するかは明らかになっていない.本研究では,健常者における液体嚥下時の舌圧を測定し,液体の物性や嚥下量による舌圧の変化を検討した.さらに,AIによる解析として機械学習を用い舌圧の特徴を探索した.

  • 後藤 祐美, 鈴木 善貴, 木村 慧, 榎本 崇宏, 仲座 海希, 船岡 俊介, 内ケ崎 一徹, 有安 雄一, 新開 瑞希, 柴垣 あかり, ...
    2023 年 29 巻 2 号 p. 132-133
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    心音のように生体音は生体の健康状態を示す非常に重要な生体信号となり得る.歯科臨床の現場においても,顎関節症における顎関節雑音や嚥下障害における頸部聴診法1)など音声を用いた診断法が確立されている.口腔や咽頭部から生じる音として,構音・発語はもちろんのこと,それ以外にも咀嚼や歯ぎしり,いびき等,様々な口腔咽頭活動に伴って音声が生じている2-4).これらの音声を包括的に取得し,判別することで,これらの活動の有無や障害をスクリーニングできる可能性がある.

    そこで本研究では,成人男性を対象に,様々な口腔咽頭活動のタスクを行わせ,咽喉マイクロフォンによる音声検出の可否及び取得された顎口腔領域の音声の音響特徴量を解析し,他の活動と識別することが可能であるか調査することを目的とした.

  • 小出 理絵, 野口 毅, 山田 蘭子, 小澤 彩, 柴垣 あかり, 田中 恭恵, 服部 佳功
    2023 年 29 巻 2 号 p. 134-135
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    口腔における味やテクスチャーに対する感覚の個人差は,食品イメージの捉え方の違いに影響する可能性がある.本研究では,口腔内でざらつきを検知するテクスチャー感覚の鋭敏さと,試験食品を摂取した時に感じる食品の物理的性質の関連を調査し,口腔のテクスチャー感受性と食品テクスチャーの知覚の関連を検討した.

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