ブラキシズムには睡眠時ブラキシズムだけでなく覚醒時ブラキシズムもある.しかし,実際の外来患者を対象に同一患者での睡眠時と覚醒時の咀嚼筋筋活動を比較した報告は非常に少ない.今回,睡眠時のブラキシズムエピソード数は少ないが覚醒時には高頻度でブラキシズムエピソードを検出した症例を経験したので報告する.
患者は初診時40代の女性で,両側顎関節症(間欠ロック)と診断した.起床時に間欠ロックと咬筋や歯の痛みの発現があり,夜間アプライアンス(スプリント)を適用したところ,起床時のこれらの症状は改善を認めた.スプリントを装着しないと起床後の咬筋のだるさが生じたため,その後もスプリントを継続し定期観察していた.しかし,初診後7年目に,口腔内の清掃状態やスプリントの使用状態は特に変化していないにもかかわらず,歯周病の悪化が認められた.そこで,ブラキシズムの悪化を疑い,ウェアラブル筋電計を用いて,睡眠時及び覚醒時の咬筋筋電図を測定した.その結果,睡眠時はスプリント非装着の2晩の筋電図波形エピソード数は平均で3.2/h,スプリント装着の2晩のエピソード数は平均で3.9/hであり,何れも少ない値であった.一方,食事中を除く覚醒時全体では66.5/hであり,かなり高頻度の回数であることが明らかとなった.
本症例の筋電図検査の経験から,睡眠時と覚醒時のブラキシズムが関連なく起こり得ることが示された.