日本顎口腔機能学会雑誌
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臨床報告
  • 中島 利徳, 山口 泰彦
    2023 年 30 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    ブラキシズムには睡眠時ブラキシズムだけでなく覚醒時ブラキシズムもある.しかし,実際の外来患者を対象に同一患者での睡眠時と覚醒時の咀嚼筋筋活動を比較した報告は非常に少ない.今回,睡眠時のブラキシズムエピソード数は少ないが覚醒時には高頻度でブラキシズムエピソードを検出した症例を経験したので報告する.

    患者は初診時40代の女性で,両側顎関節症(間欠ロック)と診断した.起床時に間欠ロックと咬筋や歯の痛みの発現があり,夜間アプライアンス(スプリント)を適用したところ,起床時のこれらの症状は改善を認めた.スプリントを装着しないと起床後の咬筋のだるさが生じたため,その後もスプリントを継続し定期観察していた.しかし,初診後7年目に,口腔内の清掃状態やスプリントの使用状態は特に変化していないにもかかわらず,歯周病の悪化が認められた.そこで,ブラキシズムの悪化を疑い,ウェアラブル筋電計を用いて,睡眠時及び覚醒時の咬筋筋電図を測定した.その結果,睡眠時はスプリント非装着の2晩の筋電図波形エピソード数は平均で3.2/h,スプリント装着の2晩のエピソード数は平均で3.9/hであり,何れも少ない値であった.一方,食事中を除く覚醒時全体では66.5/hであり,かなり高頻度の回数であることが明らかとなった.

    本症例の筋電図検査の経験から,睡眠時と覚醒時のブラキシズムが関連なく起こり得ることが示された.

学術大会抄録
  • 山川 雄一郎, 飯田 崇, 岩田 好弘, 小見山 道
    2023 年 30 巻 1 号 p. 14-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    睡眠時ブラキシズムは非機能的な繰り返しの咀嚼筋筋活動であり,この非機能的な下顎運動が口腔顔面痛,咬合性外傷,失活歯の歯根破折,補綴装置の破壊といった歯科的問題を引き起こす因子の1つとされている.これまで,睡眠時ブラキシズムが無意識下にて生じる理由と発現機序は主に中枢性の因子によって引き起こされていると示唆されている1).しかしながら,睡眠時ブラキシズムが生じるメカニズムは未だに解明されていない.

    一方,DSM-5分類における睡眠-覚醒障害群は不眠や過眠などの10の障害または障害グループを含んでおり,睡眠に問題がある状態の総称を睡眠障害としている2).睡眠障害が顎口腔領域へ及ぼす影響について検討が進められており,睡眠障害が舌の疼痛閾値3)や咬合接触の感覚閾値4)に影響を及ぼすことが示唆されている.一方,睡眠時ブラキシズムは深い睡眠から浅い睡眠レベルに移行し,微小覚醒が発生するタイミングにて睡眠時ブラキシズムを発現することから,睡眠状態を管理することによって睡眠時ブラキシズムの発現を抑制する可能性が考えられる.しかしながら,睡眠状態が睡眠時ブラキシズムの発現に及ぼす影響を検討した報告は認めない.睡眠の質の低下が睡眠時ブラキシズムの発現を惹起するならば,睡眠時ブラキシズムの抑制において睡眠状態を管理することは睡眠ブ時ラキシズムの対処療法として有用となる可能性が考えられる.

    本研究では睡眠制限による睡眠状態の変化様相を把握し,その変化様相が睡眠時ブラキシズムに与える影響の解明を目的として検討を行った.

  • 中川 悠, 山口 泰彦, 石丸 智也, 服部 佳功, 小野 高裕, 荒井 良明, 長谷川 陽子, 志賀 博, 玉置 勝司, 田中 順子, 津 ...
    2023 年 30 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    ブラキシズムは,睡眠時ブラキシズム(SB)と日中覚醒時のブラキシズム(AB)に分けられる.SB同様,ABの診断・評価には咀嚼筋筋電図検査が有用と考えられる.我々は,日中覚醒時の咬筋筋電図(d-EMG)の波形発現数などの各種パラメータは,日中のくいしばりの自覚群と自覚なし群間で有意な差はなく,両者の度数分布のオーバーラップは大きいことを明らかにした1)が,d-EMG波形の実態には未だ不明な点が多い.SB波形については,過去の研究2)で変動の指標として変動係数(標準偏差/平均値)を用い,1時間当たりの波形数やエピソード数の日間変動が報告されている.一方,d-EMG波形の日間変動に関してはこれまでほとんど検討されていない.

    そこで今回は,d-EMG波形の発現数,波形積分値の日間の変動を上述のSBの日間変動の研究2)と同様に変動係数を用いて明らかにすることとした.

  • 星野 拓真, 舩倉 智久, 斉藤 慎一郎, 木之村 史織, 小川 徹, 平田 慎之介, 田原 麻梨江
    2023 年 30 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    顎関節症症状の一つとして咀嚼筋痛障害が挙げられるが,その病態生理は不明な点が多い.過去の知見から,顎関節症患者は正常者群と比較し咀嚼筋の弾性が大きいという報告があり1),また実際に咀嚼筋が全体的もしくは部分的に硬く凝り固まっている患者は多くみられる.しかしながら,顎関節症の発症と咀嚼筋の疲労や弾性との因果関係の詳細は未解明である.本研究では,咀嚼筋の疲労と弾性特性との関係を明らかにし,顎関節症発症メカニズムの解明に貢献することを目的とした.本報告では,急性および慢性的な疲労を模擬した噛み締めタスク(等尺性筋収縮)を実施し,咬筋の弾性(剪断波速度)の変化について検討した.本研究では,慢性的な筋の疲労状態は顎関節症症状と類似し,咬筋の弾性は増加すると仮説を立て,その検証を行った.

  • 和仁 俊夫, 石井 かおり, 鈴木 裕介, 黒江 星斗, 根岸 慎一
    2023 年 30 巻 1 号 p. 22-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    近年,摂食および嚥下機能に問題がある日本人児童が増加しており,児童の口腔機能は低下傾向にある1).歯列形態の成長は,歯列弓幅径の狭窄化傾向にあると報告されている2).不正咬合の発症には遺伝的・環境的要因とエピジェネティクスが関与しており,歯の形質は,遺伝的・環境的要因とエ ピジェネティクスが複雑に関与3)し,環境的要因としての口腔機能は顎顔面形態の成長発育に影響を与える.その中でも,咀嚼運動は,環境的要因のひとつであり,我々は咀嚼運動が歯列形態の成長発育に与える影響について調査を重ねている.臼歯ですりつぶすような咀嚼の臼磨運動を活発に営んでいる者は正中口蓋縫合に応力を与え,口蓋骨の側方成長に影響すること4)が下顎大臼歯の頬側への直立を促すことで叢生歯列の予防の可能について報告している.これらのことを正しく理解し,形態の成長について予測をすることは,矯正歯科治療の成功と長期安定性を左右する.現在,臨床において狭窄歯列に対する治療は,口腔衛生に優れ,取り扱いも簡便な可徹式装置を用いた緩徐拡大治療(slow palatal expansion以下,SPE)が頻繁に用いられるが,顎顔面形態の成長発育に影響を与える環境的要因,すなわち口腔機能の影響などについての介入は軽視されがちである.また,環境的要因を考慮した際の拡大様相についての統一した結論は得られていない.

    そこで本研究では,咀嚼運動パターンがSPEによる拡大様相に与える影響について調査することを目的とした.

  • 浦田 健太郎, 大音 樹, 飯沼 利光
    2023 年 30 巻 1 号 p. 24-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    口腔外の組織と比較して口腔内の疼痛受容機構についての報告は少なく,さらに老化が口腔粘膜の疼痛受容に及ぼす影響については不明な点が多い.近年,顎顔面領域の疼痛調節に対し,三叉神経節(TG)中のマクロファージの関与が注目されている1).マクロファージは,組織損傷時や感染によって活性化した後,炎症型(M1)と抗炎症型(M2)に性質変化し,M1は炎症性,M2は抗炎症性のケミカルメディエーターを放出することで疼痛の増強あるいは減弱に関与することが報告されている2).そこで本研究では,老化促進モデルマウス(SAMP8)を用い,口蓋粘膜損傷後におけるTGでのマクロファージの活性化及びM1/M2への性質変化様相を,若齢マウス(SAMR1)と比較検討し,老化が口腔粘膜の疼痛受容機構に及ぼす変化について免疫応答系に着目して解明することを目的とした.

  • 門脇 温人, 佐々木 誠, 高橋 陽助, 玉田 泰嗣
    2023 年 30 巻 1 号 p. 26-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    舌の知覚機能は,咀嚼や食塊形成,嚥下において重要である.そのため,加齢や疾患に伴う機能低下は,誤嚥や窒息のリスクを高める要因となる.一方,知覚機能の評価方法には,知覚強度検査や二点弁別閾値検査などがあるが,評価者の手技に依存するうえ,刺激点や刺激強度が動的に変化する動的刺激や,能動的触知覚であるアクティブタッチを考慮できない問題がある.

    そこで本研究では,格子状に配置したシリコン製バルーンの膨張・収縮を制御することで,これらの問題を解決する新たな知覚機能評価システムを開発した.

  • 伊藤 有希, 田中 恭恵, 大道寺 明也, 服部 佳功
    2023 年 30 巻 1 号 p. 28-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    食べ物のテクスチャーは,おいしさと摂食嚥下の安全に関わるが,テクスチャーを捉える口腔感覚の低下が摂食動作に及ぼす影響は明らかになっていない.食品の物性が変化すると,咀嚼時の種々の運動パラメータも変化することが知られており1),ヒトは食品のテクスチャーに応じて,摂食動作を調節している.テクスチャーは食品の種類だけでなく,咀嚼の進行に伴って変化するので,テクスチャー感覚の低下は,食品や咀嚼段階に応じた咀嚼時の下顎運動や筋活動の調節や,咀嚼された食塊が嚥下に適した状態であるかの判断に影響を及ぼすと推察される.

    我々は,第68回学術大会においてざらつき感覚の低感度群は高感度群と比較して,マッシュポテトを嚥下するまでの咀嚼数が有意に大きいことを報告した.ざらつき感覚が低下すると,嚥下に適した食塊のテクスチャーを適時に認知できず,マッシュポテト摂取時の過多な咀嚼を引き起こしている可能性が示唆された.

    本研究では,ざらつき感覚と咀嚼制御の関連を明らかにすることを目的に,かたさや咀嚼に伴うテクスチャー変化の特徴が異なる3種類の食品を用いて,咀嚼回数と咀嚼運動が食品や咀嚼段階に応じて調整されているかどうかを調査し,ざらつき感覚の識別能力に基づいて比較検討した.

  • 板 離子, 岩森 大, 真柄 仁, 辻村 恭憲, 井上 誠
    2023 年 30 巻 1 号 p. 30-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/03/13
    ジャーナル フリー

    Ⅰ.目的

    口腔咽頭の感覚刺激の一つである炭酸刺激は,嚥下運動への一定の変調効果があると報告されている.近年,とろみを付与した炭酸飲料を患者に適応した際の有効性について臨床研究が報告されているが,その変調機序の検証には至っていない.本研究では,とろみのテクスチャと炭酸刺激がもたらす嚥下運動の変調について評価した.

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