日本顎口腔機能学会雑誌
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総説
サンプルサイズの設計;臨床研究のための実践的ガイド
三橋 利晴
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2024 年 30 巻 2 号 p. 83-88

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抄録

臨床試験においては,科学的側面・倫理的側面・実務的側面からもサンプルサイズを設計しておくことが必要である.本稿ではサンプルサイズを設計するためのポイントや実践的な方法について解説を行う.まず,既存情報のみを用いた観察研究や稀少疾患を対象とした研究などでは,計算によらずサンプルサイズを設計しなければならないこともある.一方で,サンプルサイズを計算する場合には,検討すべき要素としてα・β・効果量の3点がある.これら3点が決まれば,計算ツールを用いて,サンプルサイズが算出される.このうち,αとβはそれぞれ0.05および0.2を採用することがほとんどであるため,検討の余地はあまりない.そのため,サンプルサイズ算出効果量を十分に検討する必要がある.効果量の決定には,先行文献・類似研究の数値を参考にしたり,臨床的に意義のある数値を採用したりすることが推奨される.また,研究デザインや主要評価項目によって,効果量として決めておくべき要素が異なるので注意を要する.さらに,複雑な研究デザイン(例えば,マッチングを行う研究・生存時間分析・非劣性試験など)においては,より検討すべき事柄が多く,慣れていない場合にはサンプルサイズ設計が困難である.そのような場合には,生物統計学専門家や疫学専門家に相談し,適切な計算方法を採用することを推奨する.

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