2026 年 32 巻 1 号 p. 8-14
本稿では,継続的に質の高い研究論文を発信するための課題と戦略について論じる.研究力の評価には,従来は論文数や累計インパクトファクターが用いられてきたが,これらは研究分野の特性を十分に反映できないことが指摘されている.近年は,研究機関全体の持続的な研究力を評価する「厚み」の概念が重要視されつつある.日本の研究力は論文数の維持に対し,高インパクト論文の割合が低下しており,その要因の一つに研究時間の不足がある.これを解決するためには,研究者個人の効率的な研究管理,研究グループの分業,管理者による支援体制の充実が求められる.また,論文執筆においては,明確な研究課題の設定,一貫した論理構成,推敲の徹底が不可欠であり,論文の批判的吟味を通じた研究スキル向上が推奨される.研究者として重要なのは,研究の質を高め,社会に影響を与える成果を持続的に発信することである.そのために,研究者個人,グループ,研究機関がそれぞれの立場で取り組み,持続可能な研究環境の構築を目指すことが求められる.