日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
Print ISSN : 1340-9085
ISSN-L : 1340-9085
全部床義歯装着者の咀嚼機能評価に関する一考察
―舌運動能力と咀嚼能力―
越野 寿平井 敏博石島 勉大友 康資
著者情報
ジャーナル フリー

1994 年 1 巻 1 号 p. 25-32

詳細
抄録
全部床義歯装着者において, 義歯の維持・安定の観点から舌の位置や動きは重要となる.しかし, 全部床義歯装着者における舌運動機能と咀嚼能力の関係は, 未だ明らかになっていない.
本研究は, 舌運動能が咀嚼機能に及ぼす影響を検討することを目的として, 無歯顎患者20名に対する舌運動能と咀嚼機能の評価を行なった.舌運動能は, 超音波診断システムを用いて評価した.咀嚼機能評価には, 試験食品としてピーナッツを用いる節分法と摂取可能食品アンケート法の2つの評価法を用いた.
その結果は以下に示す通りである.
1.全部床義歯装着者の舌運動能, 咀嚼効率, 咀嚼スコアは, ともに加齢に伴い低下することが示された.
2.全部床義歯装着者の舌運動能力と咀嚼効率および咀嚼スコアの間には統計学的に有意な相関が認められ, 舌運動の巧みさが咀嚼能力に影響を与えることが示された.
3.咀嚼効率と咀嚼スコアの間に有意な相関が認められた.
4.客観的咀嚼機能評価の一助とするため, 舌運動能と咀嚼効率の標準的存在範囲を棄却楕円にて表示した.
本研究結果から, 全部床義歯装着者において, 舌運動能が咀嚼機能に大きく影響を及ぼすこと, 舌運動能および咀嚼機能が加齢により低下することが示唆された.さらに, 摂取可能食品アンケート法による咀嚼機能評価の有用性が示された.
著者関連情報
© 日本顎口腔機能学会
前の記事 次の記事
feedback
Top