日本顎口腔機能学会雑誌
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骨格性下顎前突症例における食物摂取時の食品空隙量および頭部運動量測定の試み
松井 理恵河野 正司花田 晃冶宮城 尚史五十嵐 直子澤田 宏二細貝 暁子石田 陽子
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2003 年 10 巻 1 号 p. 61-66

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抄録

食物摂取時の開口量は, 常に食物の大きさよりも大きく, その差すなわち食品空隙はほぼ一定の値を取ることが知られている.また, この開口運動には頭部運動が随伴しており, 円滑な開閉口運動に寄与している.つまり開口運動は, 下顎運動と頭部運動が複合した運動であるといえる.
ところで, 個々の骨格, 咬合の違いや下顎運動の特徴などによって至適な開口量や食品空隙量もまた異なる可能性が考えられ, 骨格性下顎前突症例における食物摂取時の食品空隙および頭部運動の特徴について, 興味のもたれるところである.
そこで, 本研究では, 骨格性下顎前突症例の食物摂取時開口運動における下顎運動と頭部運動を観察し, 正常咬合者との比較を試みた.
被験者は, 骨格性下顎前突症例 (女性3名, 男性1名, 計4名) , 正常咬合者 (女性3名, 男性1名, 計4名) とした.6自由度顎運動測定装置を用い, 食物摂取時の開口量および食品空隙量, 頭部運動量, 下顎頭移動量の測定を行い, 以下の結果を得た.
1.骨格性下顎前突症例群においても正常咬合者群と同様に食品空隙が存在し, その量は食品の大きさの増加に伴って減少する傾向を示した.下顎前突症例群と正常咬合者群との間では, すべての被験食品の大きさにおいて食品空隙量に有意な差は認められなかった.
2.骨格性下顎前突症例群においても, 開口運動に付随して頭部運動が観察されたが, 頭部運動量が正常咬合者群に類似した値を示す被験者と, 正常咬合者群よりも大きな値を示す被験者が存在した.
今後さらに被験者を増やし, 精査する所存である.

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