日本顎口腔機能学会雑誌
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片側全頸部郭清術症例における術前, 術後の摂食・嚥下機能についての臨床的研究
―全頸部郭清術および術後放射線照射の影響について―
松永 和秀大部 一成上石 弘大石 正道
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2003 年 10 巻 1 号 p. 53-59

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抄録

口腔癌切除後, 二次的に片側全頸部郭清術を施行した4症例および片側全頸部郭清術後に50Gyの放射線治療を施行した3症例の摂食・嚥下機能評価をおこなった.本研究では切除された舌骨上筋群・舌骨下筋群および術後放射線照射と嚥下機能との関連性ならびに術前の嚥下機能を基準とした術後の嚥下機能の経時的変化をビデオ嚥下造影検査を用いて検討した.
1.全頸部郭清術のみの症例:
口腔期 (口唇閉鎖, 口腔保持, 口腔残留の程度) は術前, 術後経時的に機能の低下はほとんどみられなかった.咽頭期 (咽頭残留の程度) では, 術後1か月目で3種類すべての検査食で少量の咽頭残留がみられたが, 術後6か月目には術前と同様レベルにまで回復していた.片側の顎二腹筋前腹・後腹, 肩甲舌骨筋を切除しても, 嚥下時の舌骨の前上方への挙上および喉頭蓋による気道閉鎖は術前, 術後経時的に良好であった.
2.術後照射症例:
口腔期は術前, 術後経時的に機能の低下はほとんどみられなかった.咽頭期では, 術後照射後咽頭残留量が増加した症例がみられたが, 嚥下時の舌骨の前上方への移動および喉頭蓋による気道閉鎖は術後経時的に良好であった.
以上のことから, 片側の全頸部郭清術および片側の全頸部郭清術後50Gyの術後照射をおこなっても, 著明な嚥下機能の低下はなく, 誤嚥の危険性はないと考えられた.

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