抄録
目的: 本研究の目的は, グミゼリー咀嚼による咀嚼能率の評価のための適切な咀嚼時間を明らかにすることである。
方法: 主咀嚼側を認識でき, インフォームドコンセントが得られた全身と咀嚼系に臨床的な異常が認められない20歳代の20名 (男性10名, 女性10名, 平均年齢25.2歳) を被験者として選択した。被験食品は, 直径15mm, 高さ8mmの円柱状で重量が約29のグミゼリーを用いた。被験者にグミゼリーを主咀嚼側で5秒間, 10秒間, 15秒間, 20秒間, 25秒間の5セッションでそれぞれ1回咀嚼させた時のグルコースの溶出量を咀嚼能率の指標として血糖測定機器で測定した。分析は, はじめに咀嚼時間とグルコースの溶出量との関係を回帰分析により調べた。次いで, 各セッションのグルコースの溶出量を25秒間の咀嚼時間で換算後, 被験者ごとに5セッションの平均に対する比を求めて標準化し, セッション間で比較した。
結果: グルコースの溶出量は, 咀嚼時間の延長に伴って比例的に増加し, 咀嚼時間とグルコースの溶出量との間に高度に有意な回帰が認められた (r=0.873, p<0.01) 。標準化後のグルコースの溶出量の平均値は, いずれのセッションも1に近似し, 標準偏差も小さかった。また, 標準化後のグルコースの溶出量の変動係数は, 15秒間で最も小さく, 20秒間, 10秒間, 25秒間, 5秒間の順に大きかったが, 20秒間と15秒間で近い値を示した。
結論: グミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量は, 咀嚼時間に比例して多くなること, またグミゼリー咀嚼による咀嚼能率の評価のための咀嚼時間は, 15秒間または20秒間が適切であることが示唆された。