抄録
本研究の目的は, 乳歯列期正常咬合児と反対咬合児の下顎前方滑走運動における下顎切歯と顆頭の運動を比較し, 反対咬合児の下顎運動機能の特徴を明らかにすることである。
被験児は正常咬合を有する乳歯列期小児 (以下, 正常咬合児群) 20名と乳歯列期前歯部反対咬合を有する小児 (以下, 反対咬合児群) 15名とした。6自由度顎運動測定装置を用い, 各被験児において下顎前方滑走運動 (以下, 前方滑走運動) を各3回計測した。解析点は下顎乳中切歯点 (以下, 切歯点) , 左右の解剖学的顆頭中央点 (以下, 顆頭点) とした。解析項目は, 上下, 左右, 前後の運動範囲および三次元直線距離とし, さらに切歯点と顆頭点の運動の関連性を明らかにするため, これら2つの解析点間の相関係数を求めたところ, 以下の結論を得た。
1) 反対咬合児群の切歯点と顆頭点の運動範囲や距離は, 正常咬合児群と比較して有意に小さかった。
2) 正常咬合児群, 反対咬合児群ともに前方滑走運動時の切歯点と顆頭点の運動範囲に高い相関が認められた。
3) 反対咬合児群は, 個人間相関係数が個人内相関係数よりも大きい傾向が認められ, 正常咬合児群とは様相が異なっていた。