日本顎口腔機能学会雑誌
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顎関節症に伴う無難聴性耳鳴の機序
佐藤 扇松本 敏彦
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2007 年 13 巻 2 号 p. 103-114

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抄録
無難聴性耳鳴を伴う顎関節症 (OMS群) と耳症状のない顎関節症 (TMD群) の2群の (1) 顎関節MR撮像による関節円板の動態, 円板変形や関節液像の有無, (2) 顎関節側方規格や願一頭頂方向のX線写真上の下顎頭位, (3) 顎関節側方X線規格写真上に転写した終末蝶番軸点の位置, (4) 咬合分析による下顎頭偏位の三次元的分析などの運動論的検討に加え, (5) DPOAE (歪成分耳音響放射) による蝸牛外有毛細胞の活動様相, (6) SR (音響性耳小骨筋反射) による脳幹反射弓の遠心路の反応, (7) TM (テインパノメトリー) によるIMP (鼓膜インピーダンス) とPRS (ピーク圧) などの他覚的耳科学検査を施行して, 顎関節症に伴う耳鳴の機序を検討した.
その結果, OMS群は, TMD群に比較して (1) 変形円板が有意に多く, (2) 顎関節側方X線規格写真上に転写した終末蝶番軸点は有意に後方位を示し, (3) 咬合分析では, Lat (内外方向偏位量) をSag (前後方向偏位量) で除して算出されるベクトルLat/Sag (偏位方向) が有意な相違を示した.他方, 耳科学検査ではOMS群は, TMD群に比較してSRの (4) 反射閾値が患側耳で有意に高く, (5) 潜時L1が対側耳で有意に短く, (6) 対側耳のPRS (ピーク圧) が有意な陰圧傾向を示した.しかし (7) DPOAEの差違はみられなかった.
以上の結果から, 無難聴性耳鳴を伴う顎関節症には患側下顎頭の回転半径の小さい捻れを示唆する運動論的特徴が窺われ, DPOAEに差違がみられないにも拘わらず, 患側の一側耳でのみ示されたSR反射閾値の差違から, 下顎頭の捻れによる関節包の侵害刺激が三叉神経節から上オリーブ核へと投射する可能性が示唆された.
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