日本顎口腔機能学会雑誌
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咬合高径が聴覚路に及ぼす影響
町山 由花松本 敏彦
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2008 年 14 巻 2 号 p. 82-88

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抄録
本研究は, 開口路における高径増大が聴覚路に及ぼす変化の有無を, ティンパノグラム, 歪成分耳音響放射 (DPOAE) , 音響性耳小骨筋反射を測定して検: 討したものである.測定下顎位は咬合器にチェックバイトで付着した閉口位 (V0) を基準として, 咬合器の切歯桿尖端にて3.Omm挙上 (V3) , 5.0mm挙上 (V5) を咬合器上で規定した.V3, V5の被検者ごとに換算した切歯点の高径は, V3は2.30mm±0.19となり安静空隙量以下の数値で, V5は3.68mm±0.30で安静空隙量を超えるが, V3, V5の開口量は蝶番運動の範囲と考えられる.検討の結果,
1.静的コンプライアンス (STC) は高径増大に伴い上昇を示し, V0-V3間では危険率5%, V0-V5間では危険率1%で有意差を認めたが, 中耳腔内圧 (PRS) および中耳腔容積 (EAC) には変化はみられなかった.
2.DPOAEはf15031Hzの周波数帯域でのみ閾値上昇がみられ, V0-V3間, V0-V5間のいずれでも危険率5%で有意差を認めた.しかし他の6周波数帯域には変化はみられなかった.
3.反射閾値, 潜時L1には変化はみられなかった.
以上のように, 中耳腔の内圧や容積が変化しない蝶番運動路の高径増大でも中耳コンプライアンスは有意に変動し, 蝸牛膨大部稜を推定する周波数帯域に限局する変化がみられた.
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