抄録
眼窩下神経幹を構成する複数の神経束の顔面受容野をネンブタール麻酔したネコで調べ, 神経幹における神経束の位置とその受容野の位置および大きさとの関係を解析した.鼻部や眼瞼下部領域では1本の神経束がしばしば複数の領域を同時に支配するのに対し, 上唇部や口角部では限られた領域だけを支配していた.しかし, 鼻部を支配する神経束が上唇部や口角部まで支配することはなく, その逆もなかった.眼窩下神経幹において, その内側部に位置する神経束群は鼻部全域と眼瞼下部の一部を支配し, 中央部から外側部に位置する神経束群はヒゲや上唇部, 口角部を支配していた.以上の結果から, 鼻部および眼瞼下部を支配する神経束のグループと, 上唇部および口角部を支配する神経束のグループが, 互いに独立してそれぞれの領域からの感覚情報を中枢に伝えていることが推察された.