抄録
本研究は, 口蓋粘膜への荷重負荷が血流量に及ぼす影響を, レーザードップラー血流計を用いて検索することを目的に行った.実験は5名の健常者 (平均年齢26.4歳) を被験者とし, レーザードップラー血流計を用いて, 口蓋後側方部および口蓋正中部 (口蓋ヒダ部) に直径4mmのプローブを介して, 荷重量400gf, 40秒間の加圧を行ったときの血流量を測定した.さらに, 口蓋後側方部において, 同じく荷重量400gfで加圧時間を10, 20, 30秒と変化させた場合, および加圧時間40秒で荷重量を100, 200, 400gfと変化させた場合の血流量を測定した.その結果, 以下の結論を得た.
1.加圧部位の相違による血流変化については, 口蓋後側方部の左右側粘膜では加圧終了直後に反応性の充血がほとんどの場合で出現したが, 口蓋正中部では反応性充血が出現しないか明確でない場合が多かった.
2.加圧時間の相違による血流量変化については, 加圧時間が増加した場合, 加圧前の血流レベルに戻るまでの回復時間は延長する傾向がみられた.これに対して, 加圧時の血流減少量ならびに加圧後の血流増加量は加圧時間に関係なく, ほぼ一定となる傾向を示した.
3.荷重量の相違による血流量変化については, 荷重量が増加した場合には, 回復時間は延長する傾向がみられた.また, 加圧時の血流減少量も荷重量増加に伴って増大する傾向を示した.一方, 加圧後の血流増加量については, 荷重量の変化によって一定の傾向は認められなかった.
4.以上のことから, 加圧時間と回復時間, 荷重量と回復時間, および荷重量と加圧時血流減少量との間にはそれぞれ一定の関係が認められ, 顎粘膜の性状や特性を評価する指標として有効であることが示唆された.