日本顎口腔機能学会雑誌
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咀嚼時における口唇周囲軟組織の動きに関する空間的構造分析
―主成分分析の応用―
坂口 究川崎 貴生
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1999 年 5 巻 2 号 p. 101-114

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抄録

本研究は, 咀嚼時の口唇周囲軟組織皮膚表面上の15測定点の運動 (45自由度をもつ時系列データ) から, 咀嚼運動を代表する総合的指標 (主成分) を多変量統計解析の一一手法である主成分分析法を応用して抽出し, より低い自由度に還元することが可能であるかを検討するとともに, この解析法が咀嚼運動, そして顎口腔機能の評価法として有効であるかを検討することを目的として行った.
被験者には, 健常有歯顎者15名と上下総義歯装着者4名を選択した.また, 被験食品には, 十分軟化したチューインガムを用いた.
45自由度の時系列データに対して, 主成分分析法を応用して解析した結果, 健常有歯顎者の咀嚼時の口唇周囲軟組織皮膚表面の運動は, 第3主成分まで求めれば, その運動 (45自由度の時系列データ) の97%以上が表現できた.つまり, 健常有歯顎者の咀嚼時の口唇周囲軟組織皮膚表面の運動は, 3自由度 (3次元変量) の運動として十分表現可能であることが示された.同様に, 上下総義歯装着者の運動は, 4自由度 (4次元変量) の運動として十分表現可能であることが示された.また, 還元された主成分を主成分得点の時系列変化として捉えることにより, 咀嚼時の口唇周囲軟組織皮膚表面の運動を時間的にも定量的に解析することができた.
以上のことから, 咀嚼時の口唇周囲軟組織皮膚表面の運動は, 多変量統計解析法の一手法である主成分分析法により, 空間的, かつ時間的にも定量的に解析可能であることが示され, 咀嚼運動および顎口腔機能の評価法として, 本解析方法の有効性が示唆された.

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