日本顎口腔機能学会雑誌
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舌の違和感を訴える患者に2回鋳造法を適用した一症例
白井 肇瀬島 淳一萬谷 祐佳鈴木 雄一郎谷本 裕子皆木 省吾
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2002 年 9 巻 1 号 p. 53-60

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抄録
補綴物装着後に舌の違和感を訴える患者のなかには, 咬合関係や形態に非常に敏感な患者がおり, 新たに行われた補綴処置により, 舌の違和感が発生したと訴える患者も存在する.補綴物の咬合関係や形態の微妙な変化を感じとるこの様な患者に対して, 鋳造歯冠修復を行う際には, 暫間補綴物による舌の違和感の消失後, 顎口腔機能に調和した高精度の冠・橋義歯を作製することが, 質の高い口腔再建の重要な要件となる.
このような症例に対して我々は, 平成8年以来, 無意識下において生じるグラインディング時等の滑走経路が咬合面に再現され得る2回鋳造法による補綴物を作製することによって対処し, 良好な結果を得ている.本手法は, 冠・橋義歯の咬合に影響を与え得る鋳造修復の技術的な誤差のうち, いくつかの主な要因を排除できる手法である.排除し得る誤差には, 対合歯の模型の変形による誤差, 咬合採得の誤差, 咬合器装着の誤差, 口腔内の支台歯の適合性に由来する誤差ならびに隣在歯とのコンタクトの状態による誤差がある.これらの誤差は咬合面形成前のベースクラウンの試適の段階で取り除くことが可能であるため, 2回鋳造法によって全て除去することが可能である.本手法を用いて作製された補綴物は, 最終装着時に咬合調整の必要性がほとんどない.
今回その一症例について報告するとともに, その作製法の手順ならびに作製時の注意事項について詳細に紹介する.本手法は暫間補綴物の詳細な咬合調整を必要とする症例に対して大変有用であると考えられる.
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