2024 年 39 巻 p. 95-110
本論では一つのカテゴリに基づくコミュニティが、複数のスティグマがある「発達障害があるニューカマー第二世代」に対し包括的な社会関係資本を提供できるのかを検討した。このため当事者のコミュニティにおける経験を、集団が相互扶助の規範を適用する範囲を示す「信頼の範囲」の概念から分析した。その結果、エスニックコミュニティでは集団内の文化的価値規範が優先され、レイシズムからの保護は可能でも、「発達障害」について理解を得られる場とはならなかった。しかし世代交代や「発達障害」の情報を共有すること、新たなコミュニティを外部に形成すること等により、今後は当事者の脱スティグマ化に有用な社会関係資本を提供できる素地がみられた。このことから、交差性の理論や実践に対しても、完全に同じ立場ではない他者との間に形成される橋渡し型社会関係資本の活用を検討する意義を示唆した。