社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
特集 東日本大震災以降の社会理論の課題
無知をめぐる争いと科学/政治
小松 丈晃
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キーワード: 無知, 不確実性吸収, 信頼
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2014 年 94 巻 p. 55-79

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抄録

 本稿では、社会学理論・学説研究の視点から、「無知をめぐる争い」とでも言いうる事態がますます顕在化するにいたった東日本大震災後の状況について、政治と科学の関わりに焦点を当てて観察するためのありうる一つの見方を、呈示したい。そのためにまず、社会システム理論の知見を援用しつつ、「不確実性吸収」のプロセス、および、それによる「無知の潜在化」がもたらす多大な「リスク」について論じる。その上で、外的な要求圧力が、「シンボリック・メディア」のインフレーション/デフレーションをもたらし、過剰な信頼とそれによるリスク増大が帰結しうることを、指摘する。またこのことは、「偽」であることによる損害よりもむしろ、「真理」であることによる損害という別種の問題への対応が迫られることをも意味する。最後に、こうしたメディアのインフレーション/デフレーションが生じるとき、人格や役割やプログラムといった予期の各レベルの過度な圧縮や分離がもたらされ、科学への信頼や不信に多大な影響をもたらしうることを示す。

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© 2014 東北社会学研究会
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