2014 年 94 巻 p. 81-108
東日本大震災は、日本社会に深甚かつ複雑な課題を残した。その課題の克服には、官民を問わぬ多元的なアクターの連携が必要である。ガバナンス論の分野は、このようなアクターの多元的な連携について示唆的な研究を蓄積している。本稿の課題は、ガバナンス論が示唆するガバナンスの多様な可能性に学びつつ、現代社会が持ちうるガバナンスの可能性を最大限に発揮するための可能性の条件を社会理論、とりわけ機能分化論の見地から考察することである。 機能分化論は、国家・市場・市民社会のいずれの領域にも傾斜せず、社会が直面する問題の設定とその解決のための方途をつねに比較検討することを促す。ガバナビリティとは、両者をたえず適切に組み合わせてゆくことである。このような意味でのガバナビリティを最大限に発揮するためには、問題とその解決に向けた取り組みに対する柔軟な比較検討の視点、そして社会が内蔵するリソースを問題解決に機動的にあてるための多元的な流動性が必要なのである。