日本歯科保存学雑誌
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原著
新規S-01粉末の噴射による歯質研削効果
田川 剛士
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2007 年 50 巻 4 号 p. 415-424

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抄録

コンポジットレジンの歯質接着性の向上に伴って,これまでの修復処置の概念が見直されるようになり,窩洞形態に拘泥することなく治療ができるようになった.これらのことは,窩洞形成法にも影響を与え,エアタービンや電気エンジン以外の歯質削除方法を選択できることとなり,歯質削除時の不快感の少ないレーザーの臨床応用や粉末噴射による方法が試みられるようになった.粉末噴射法では粉末を変えることにより,エナメル質や象牙質,さらには脱灰象牙質を効率的に削除できる可能性を有しており,種々の粉末が試みられている.アルミナ粉末は歯質削除能に優れているために短時間で象牙質だけでなくエナメル質も削除できるが,脱灰歯質よりも健全歯質の削除に優れ,罹患歯質の選択的な削除が困難である.また,アルミナ粉末は硬く化学的に安定な材料であるがゆえに,飛散粉末が患者・術者・介補者の健康あるいは周辺機器に与える影響も懸念される.当教室では粉末噴射法の臨床応用に関して,削除時の痛みが非常に少ないことに注目し,生体に安全と考えられる粉末として桃種やキトサンを用いた方法を報告した.しかし,それらは急性齲蝕に認められるような軟らかい象牙質に対しては効果的と考えられたが,陳旧性の硬い象牙質では,短時間で効率的に削除するのは困難であることが判明した.そこで,本研究では脱灰歯質の削除効率と飛散粉末の生体安全性を考慮して,食品添加物の一種である亜硫酸ナトリウムの粉末(S-01)について実験を試みた.実験にはウシの歯を使用し,健全あるいは脱灰した歯質についてアルミナ粉末とS-01粉末による削除深さを比較検討した.その結果,健全エナメル質の削除は不向きと考えられたが,象牙質では,特に脱灰象牙質の選択的な除去が可能となるものと考えられ,臨床的有用性が示唆された.

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