日本歯科保存学雑誌
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原著
Ozony Tron®の歯内療法処置への応用 : オゾンの感染根管治療に対する殺菌効果について
山田 博仁内山 真紀子細矢 明宏中村 浩彰山本 昭夫笠原 悦男
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キーワード: オゾン, Ozony Tron®, 殺菌効果
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2007 年 50 巻 6 号 p. 657-663

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抄録

オゾンは酸化作用による殺菌作用に加えて,オゾンに付帯するとされる組織賦活作用などから,歯科医療においても,殺菌,消炎,止血への効果が着目され,オゾン水を用いた義歯の洗浄・消毒や歯周ポケット,根管治療時の洗浄液としての可能性などが検討されている.近年,空気中の酸素からオゾンを発生するオゾン発生器,Ozony Tron®が開発された.この装置は,オゾンを発生させるための酸素ボンベなどを必要とせず,小型軽量の簡便性に加えて,発生したオゾンガスも空気中で酸素に分解されるため安全であることから,訪問診療の携行にも有用と思われる.今回,感染根管を対象として,臨床応用を行ったところ,若干の知見が得られたので報告する.根管拡大に先がけての根管培養で陽性培養が得られた失活歯155歯,250根管のうち,著者らが日常の臨床で行っている根管の拡大基準(安田の基準)に従って,拡大・形成後の根管培養でも陽性が確認された130根管を本実験の被験歯とした.被験歯を無作為選択で88根管にオゾンガスを応用し,残りの42根管には,ネオクリーナーと3%オキシドールによる交互洗浄を行って実験対照とした.それぞれ応用直後に根管培養試験を行い,さらに次回来院時にも,処置に先がけて二度目の培養試験を行って成績を判定した.また,術前のエックス線写真から根尖病巣の有無による陰性培養獲得率との関係についても調査を行い,以下の結果が得られた.1.250根管中,根管拡大のみで陰性培養が得られたのは120根管(48.0%)であった.2.オゾンガス応用例は88根管中42根管,47.7%に無菌を示し,そのうち10根管,症例中の11.4%が次回培養まで陰性が持続した.3.交互洗浄例は,42根管中36根管,85.7%が無菌を示し,そのうち21根管,全例中の50.0%が次回培養まで陰性が持続した.4.根尖部エックス縁透過像と陰性培養獲得率の関係は,オゾンガス応用例は根尖病巣の有無にかかわらず,いずれも約50%の陰性培養率であった.交互洗浄例は,根尖病巣(-)が100%,(±)が91.0%,そして(+)が64.0%の陰性培養率であった.

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© 2007 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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