日本歯科保存学雑誌
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原著
水酸化カルシウムが次亜塩素酸ナトリウムの有機質溶解効果に及ぼす影響
武内 ひとみ松井 智辻本 恭久松島 潔
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2008 年 51 巻 2 号 p. 163-168

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抄録

近年,根管貼薬剤は,刺激の強いホルマリントリクレゾールから,生体親和性,抗菌性,硬組織形成促進作用を有する水酸化カルシウム[Ca(OH)2]が広く用いられるようになってきた.一方,根管洗浄剤には,細菌をはじめとする根尖性歯周炎の再発の原因となる根管内の有機質を効果的に除去できる次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)が広く用いられている.NaClOの有機質溶解作用は活性酸素種の一つである次亜塩素酸(HClO)によるもので,その効果は,洗浄中に発生するフリーラジカルの量に依存すると考えられている.また,NaClO溶液中のHClO濃度は水素イオン濃度(pH)に依存すると考えられており,pH2.7〜6.5の間でHClO濃度が最も高くなり,pH8.0以上では,ClO-濃度が増加し,有機質溶解作用は減弱する.そこで本研究では,有機質としてゼラチンを用いて,NaClOの有機質溶解作用に与える影響について検討を行った.5% NaClO[0mg-Ca(OH)2群],5% NaClOに1mg/mlのCa(OH)2を添加した群[1mg-Ca(OH)2群],5% NaClOに0.1mg/mlのCa(OH)2を添加した群[0.1mg-Ca(OH)2群],5% NaClOに0.01mg/mlのCa(OH)2を添加した群[0.01mg-Ca(OH)2群]をゼラチンに作用させた.ゼラチン溶解において,1mg-Ca(OH)2群と比較し,0mg-Ca(OH)2群において溶解量に有意差が認められた(p<0.01).また, Ca(OH)2の濃度に依存し,pHの上昇が認められた.発生したフリーラジカル量は,電子スピン共鳴法を用いて測定を行った.Ca(OH)2の濃度に依存し,DMPO-Xの発生増加が認められ,経時的にDMPO-Xの減少が認められた.これらの結果から,Ca(OH)2の添加により,NaClOのゼラチン溶解量は抑制されることが示唆できた.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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