日本歯科保存学雑誌
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原著
歯科用CT画像を用いた歯根破折のスクリーニング
萩谷 洋子吉岡 隆知須田 英明大林 尚人
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2008 年 51 巻 3 号 p. 344-351

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抄録

本研究では,歯科用CTで撮影された画像を用いて,垂直性歯根破折(VRF)のスクリーニングを行うことの有用性について評価した.歯科用CTとして,3DXマルチイメージマイクロCT®(モリタ製作所,以下,3DX)を用いた.それぞれ15症例ずつのVRFおよび非VRFと診断された,術前3DX歯列平行断像を研究対象とした.無作為に提示されたこれらの画像について,5名の歯科医師が根尖部透過像の輪郭を描出した.根尖病変形態を評価する2つの指標(複雑度およびRadial SD)を用いて,VRFを示す確率モデルをロジスティック回帰モデル式により構築した.複雑度およびRadial SDについて,「VRFの診断」および「読影者」を要因とする二元配置分散分析を行った.有意水準は5%とした.また,ロジスティック回帰分析により,選択された因子のROC(receiver operating characteristic : 受信者動作特性)曲線を用いて,VRF群と非VRF群を最適分類するためのカットオフ値および曲線下面積を求めた.このカットオフ値により各症例を「破折」および「非破折」と判定し,各読影者間の一致率κ値について検討を行った.複雑度およびRadial SDについて,読影者間に統計学的な有意差は認めなかった(p>0.05)が,破折の有無については有意差を認めた(p<0.05).さらに,ロジスティックモデル式はP(x)=1/(1-e-x),x=-9.432+0.094×(複雑度)+0.144×(Radial SD)となり,このロジスティックモデル式におけるROC曲線では曲線下面積は0.93と計算された.カットオフ値は,敏感度および特異度が最大となる0.475とした.このカットオフ値を用いた「破折」および「非破折」の判定における感度,特異度および正確度はそれぞれ0.87,0.89および0.88と計算され,すべての読影者間のκ値の平均値は0.79となった.歯科用CT画像では,VRF群の根尖病変形態は,非VRF群よりも複雑であることが明らかとなった.また,根尖病変の形態解析により,破折確率を算出することが可能であった.根尖病変の形態描出については読影者間に差がないことが示された.以上の結果より,歯科用CTで撮影された画像を用いてVRFのスクリーニングを行うことの有用性が示唆された.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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