日本歯科保存学雑誌
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51 巻 , 3 号
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総説
原著
  • 冨永 貴俊, 向井 義晴, 杉崎 新一郎, 岩谷 いずみ, 寺中 敏夫
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 226-235
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    再石灰化したエナメル質脱灰病巣が物理的,化学的に安定した性質を有することは臨床的にきわめて重要である.本研究では,エナメル質脱灰病巣をフッ化物を添加しない環境下で再石灰化させ,それに伴うミネラルと微小硬さの回復を検討するとともに,耐酸性獲得を顕徴ラマン分析により考察した.脱灰したウシ歯冠部エナメル質を6週および12週の再石灰化後,さらに耐酸性試験を行った.それぞれの段階でTransversal Microradiogram撮影し,ミネラルプロファイルを作成した.病巣断面の硬さは,表層10μmから200μmまで10μm間隔にて測定した.ラマン分析は,病巣および未処理部分の表層から約10,50μmおよび100μmの位置の炭酸基とリン酸基の変化を測定した.ミネラル密度は,6週の再石灰化により健全エナメル質に類似したプロファイルにまで回復し,病巣体部付近でも健全エナメル質の約9割近くの回復を示した.12週でも6週と同様のミネラル密度を示した.一方,病巣体部の硬さは,6週の再石灰化後では健全エナメル質の4割程度,12週後では6割程度の回復にとどまった.6週再石灰化後の耐酸性試験では,病巣深度70μm付近までは健全エナメル質の脱灰に比較し高いミネラル密度を維持したものの,75μm付近では逆に脱灰が進行する二相性のプロファイルが認められた.12週後では病巣全域で健全エナメル質の脱灰よりも高いミネラル密度が維持された.ラマン分析では,健全部に比較し再石灰化部位の炭酸基に対するリン酸基の割合の増加が確認された.これらの結果から,再石灰化により脱灰病巣へのミネラルの取り込みは,6週までにほぼ飽和点まで回復するのに対し,物理的性質の硬さの回復はきわめて遅れて生じていることが示され,結晶の生成や成長方向などが起因しているものと考えられた.また,再石灰化エナメル質の耐酸性が向上する現象には,アパタイト結晶のリン酸基の割合の増加が関与している可能性が示された.
  • 米田 雅裕, 鈴木 奈央, 内藤 徹, 岩元 知之, 山田 和彦, 岡田 一三, 島野 裕一, 廣藤 卓雄
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 236-245
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    口臭は現代人にとって重要な歯科的問題の一つである.口臭には実際に悪臭が感知される真性口臭症と精神的要因が大きい仮性口臭症や口臭恐怖症がある.一般の歯科医師にとっては,歯科治療で改善が期待できる真性口臭症のほうが対処しやすいと考えられている.しかし,症例によってはモチベーションの向上が困難であったり,多くの歯科的問題を有し改善するまで時間がかかることもある.患者は54歳の女性で,約20年間にわたって口臭について一人で思い悩んできたとのことである.初診時に,官能検査,ガスクロマトグラフィー検査を行ったところ,比較的強い口臭が検知された.さらに原因の診査を行ったところ歯周疾患,舌苔,大きなう蝕,不適合な修復物が認められ,真性口臭症のなかの「口腔由来の病的口臭」と診断した.歯周治療,歯内治療,補綴処置など治療が長期間にわたることが予想されたため,十分な説明を行った.また,初診時の医療面接の結果,口臭が原因でやや社会生活に支障があると考えられたので,共感的態度と受容的医療面接を行い口臭に対する不安を減らすよう心がけた.その結果,良好な患者-歯科医師関係が得られ治療は順調に進行した.そして,患者の体調不良により約2年間の中断があったにもかかわらず高いモチベーションが持続し,その後の歯科治療も問題なく行われた.そして,歯科治療終了後には口臭がほぼ完全に消失し高い患者満足度が得られた.このように治療中断があったにもかかわらず,長期間の治療が継続され最終的に口臭がほぼ完全に消失したのは,歯周治療だけでなく不適合補綴物など口腔内の問題点を可能なかぎり除去したためだと思われる.さらに,初診時に口臭の原因や治療法を十分に説明し,その後も歯科医師や歯科衛生士が時間をかけてカウンセリングしたことにより,「口臭を減らしたい」という患者のモチベーションが長期間にわたって持続したと考えられる.今後,口臭を主訴に来院する患者の増加が予想されるが,十分な診査によって適切な診断を下し,診断に応じた治療を行っていくことが重要だと考えられる.
  • 美原(和田) 知恵, 瀬戸 浩行, 堀部 ますみ, 木戸 淳一, 永田 俊彦
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 246-255
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    サイクロスポリンA(CsA)は,免疫抑制剤として臓器移植患者や自己免疫疾患患者に広く用いられている.CsA服用の副作用として腎障害,肝障害,および歯肉増殖症が挙げられるが,これらの副作用に加えて最近,CsAによって骨粗鬆症が誘発されることが実験的にも臨床的にも報告されている.一方,骨粗鬆症を併発している歯周病患者では付着の喪失が大きく,骨粗鬆症は歯周病のリスクファクターの一つとして知られている.このことから,CsAは,歯周病において歯肉増殖症を誘発させるだけでなく,骨代謝にも影響を及ぼしていると考えられる.しかしながら,CsAの歯槽骨代謝に及ぼす影響については不明な点が多い.そこで本研究では,CsAがラット歯槽骨に及ぼす影響について,ラット実験モデルを用い,組織学的検索を行った.15日齢雄性Fischer系ラットを用い,実験群ではCsA(50-200mg/kg)を含む粉末飼料を,対照群では粉末飼料のみを食餌として与えた.飼育開始後8,16日および30日目に両群より下顎骨を採取し,CsAの下顎骨への影響を検討した.マイクロCT解析では,第一臼歯セメントエナメル境(CEJ)から歯槽骨骨頂(ABC)間の距離(CEJ-ABC)の計測,および周囲歯槽骨の三次元的な形態計測を行った.また,組織学的分析では同試料の脱灰薄切切片を作製し,酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を行い,TRAP陽性破骨細胞数,さらに骨芽細胞数についても測定を行った.マイクロCT解析の結果,実験期間を通じて実験群と対照群でCEJ-ABC間距離に有意な差は認められなかった.CsA8日投与群では歯槽骨の形態に対照群と差は認められなかったが,16日および30日のCsA投与群では対照群と比較して有意に同部の骨密度および骨梁幅の減少が観察された.さらに,骨吸収の指標である骨の表面積/体積は実験群で有意な増加が認められた.一方,TRAP陽性破骨細胞数および骨芽細胞数は,飼育開始8,16日および30日のいずれも両群で差が認められなかった.これらのことから,CsAは単独では歯周炎を発症させないが,骨代謝に影響を及ぼしていることが確認できた.本研究の結果から,CsAは歯周炎における歯槽骨吸収に対して増悪因子として作用することが示唆された.
  • 波部 剛, 高森 一乗
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 256-265
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    近年,歯科治療において,審美的,理工学的などの用件より接着技術が頻用されている.口腔を対象とする歯科臨床において,接着の阻害因子である湿度のコントロールが重要である事実を,In vitroの多くの研究,すなわちその上昇により接着強さが低下するという結果が明らかにしている.しかし,口腔の湿度分布やその防湿効果に関する研究は少なく,その詳細は不明である.今回われわれは,今後主流を占めるであろう接着臨床に必要となる基礎データを,口腔の環境面からのアプローチとして,口腔内の温・湿度に着目し,その分布とエア・ブロー,サクション,ラバーダム防湿による変化を検討した.事前に本研究の主旨を説明し同意が得られた,顎口腔機能に異常を認めない成人10名,平均年齢31±4歳(男性5名,女性5名)を対象に行った.なお本研究は,明海大学倫理委員会承認番号A0607に則って行った.測定装置として温・湿度センサ(THP-B4T,神栄)を用い,温湿度変換器(THT-B121,神栄)を用いて,データ記録装置(midi Logger GL200,グラフテック)にデータを記録した.PC上で解析ソフト(midi Logger Software,グラフテック)を用いて検討した.実験1 口腔内温・湿度分布上顎前歯ならびに臼歯の唇(頬),口蓋側にそれぞれ湿度センサを配置し,その温・湿度が安定するのを待って測定を行った.実験2 エア・ブロー,サクションによる温・湿度の変化上顎第一大臼歯頬側部にセンサを配置し,エア・ブロー,サクションをそれぞれ5,10秒行い,処置前後の温・湿度の変化を経時的に観察した.また同部にラバーダム防湿を行い,その変化も測定した.口腔の湿度においては,後方にいくほどその湿度の上昇が観察され,温度も上昇が観察された.相対湿度ならびに絶対湿度の測定においていくつかの差異が認められた.各防湿法の比較においては,エア・ブローならびにサクションにおいて,温・湿度の低下が観察されたが,その影響は一時的なものであり,それぞれを中止すると,ただちに温・湿度の上昇が観察された.ラバーダム防湿においては,防湿後の温度の変化はほとんど観察されないが,有意な湿度の低下が観察され,その効果は持続的で安定していた.部位的な差異同様,相対湿度と絶対湿度においていくつかの差異がみられた.以上の結果より,口腔内の温・湿度の分布に差があること,持続的な防湿効果はラバーダム防湿のみに観察されること,エア・ブロー,サクションにより温度が大きく変化することにより,相対湿度ではなく絶対湿度が湿度の指標として適切であることが明らかとなった.
  • 川崎 弘二, 三宅 達郎, 神 光一郎, 酒井 怜子, 吉田 邦晃, 田中 浩二, 河村 泰治, 西村 有祐, 廣瀬 泰明, 谷本 啓彰, ...
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 266-273
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,ヒトを対象に感染象牙質の除去を行う際に段階的なQLF(quantitative light-induced fluorescence)法による評価を行い,感染象牙質の除去に対するQLF法の応用の可能性について検討した.被験者は臨床的に修復治療が必要な象牙質に達するう蝕をもち,インフォームド・コンセントによる内容説明を行い実験の参加に同意を得た健康な成人3名とし,各被験者それぞれ2歯を対象とした.視診による色調の変化,触診による象牙質の硬さを診断基準として感染象牙質の除去を行う際,段階的にQLF法による評価を行った.QLF法による画像解析の結果,すべての被験歯において最大蛍光強度を示すΔR Max値はう窩の開拡に伴って上昇し,感染象牙質が露出すると最大値を示した後,感染象牙質の除去が進むにつれ低下するという山型の変化を示した.すなわち,ΔR Max値により感染象牙質の除去に対応した局所的な蛍光強度の変化が観察でき,QLF法の応用により感染象牙質が定量的に評価できる可能性のあることが明らかとなった.
  • 韓 臨麟, 松井 香苗, 岡本 明, 興地 隆史
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 274-280
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    歯内療法用仮封材には,複雑な口腔環境下で確実な封鎖性を維持することが求められる.本研究では,水硬性仮封材(キャビトン®,ジーシー;キャビット®,3M ESPE;およびハイシール®,松風),酸化亜鉛ユージノールセメント(ネオダイン®,ネオ製薬),酸化亜鉛ユージノール系ハイブリッド仮封材(ユージマー®,日本歯科薬品)および酸化亜鉛非ユージノールセメント(キャンシール®,昭和薬品化工)を被験材料とし,これらの封鎖性をサーマルサイクリングあるいは繰り返し荷重負荷の条件下で評価した.さらに,水酸化カルシウム製剤およびホルマリンクレゾール(以下,FC)を貼薬剤として用いた場合に,仮封材の封鎖性が相違するか否かについても検討を加えた.180本のヒト抜去大臼歯に髄腔開拡後,水酸化カルシウム製剤(カルシペックスII®,日本歯科薬品)もしくはFC(歯科用ホルムクレゾール「村上」®,アグサ)を貼薬した後,各被験材料で仮封を行った.これらの試片を蒸留水中に37℃,6日間浸漬保管した後,条件A(0.2%フクシン溶液12時間浸漬),条件B(サーマルサイクリング後0.2%フクシン溶液浸漬),条件C(サーマルサイクリング後,0.2%フクシン溶液浴下繰り返し荷重負荷)の3条件で色素浸透試験を行った(各n=5).次いで各試片を頬舌側方向に縦断後,仮封材と窩壁の間に生じた色素浸透を実体顕微鏡にて観察し,4段階のスコアを与えた.得られたデータについて,分散分析(Kruskal-Wallis検定)と多重比較検定(Dunn検定)を用いて5%の有意水準で統計解析を行った.その結果,浸漬のみ,およびサーマルサイクリング負荷の条件では,ネオダイン®がキャンシール®,ハイシール®,ユージマー®と比べて有意に著しい色素浸透を示した.また,サーマルサイクリング後繰り返し荷重負荷の条件ではネオダイン®,キャンシール®がハイシール®と比較して有意に著しい色素浸透を示した.カルシペックスII®とFCを根管貼薬剤とした場合,色素浸透に差はみられなかった.以上より,本実験条件下ではハイシール®が最も良好な封鎖性を示すことが示唆された.
  • 近藤 一郎, 小林 哲夫, 若林 裕之, 山内 恒治, 岩附 慧二, 吉江 弘正
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 281-291
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    母乳に含まれるラクトフェリン(LF)は鉄結合性糖タンパク質であり,抗菌作用などの生理活性を有することが知られている.本研究では,ウシLF配合錠菓(森永乳業)を3カ月間摂取した場合の歯周炎患者に及ぼす影響を,臨床的,細菌学的,および生化学的に検討した.同意が得られた軽度慢性歯周炎患者18名を無作為に,ウシLF含有錠菓摂取群(実験群:8名)およびプラセボ錠菓摂取群(コントロール群:10名)に分けて,ともに錠菓を1日3回(1回2錠)3カ月間摂取し続けてもらった.錠菓摂取直前(ベースライン),摂取1週後,1カ月後,および3カ月後の来院時に,1)歯周組織検査,2)定量性PCRによる歯肉縁下プラークおよび唾液細菌検査(総菌数,Porphyromonas gingivalis数,Prevotella intermedia数,3)サンドイッチELISA法による歯肉溝滲出液(GCF)および唾液ヒト・ウシLF濃度検査,4)リムルステストによるGCFおよび唾液エンドトキシン濃度検査,を二重盲検法にてそれぞれ行った.各来院時での検査結果の群間差をMann-Whitney U testにて統計解析した.本実験期間中でウシLF錠菓摂取に伴う副作用は一切認められず,同錠菓の安全性が再確認された.実験群ではコントロール群と比べてベースラインに対する歯肉緑下プラーク細菌数変化量の有意な低下が,総菌数(1カ月後),P.gingivalis数(1,3カ月後),P.intermedia数(1週後)においてそれぞれ認められた.唾液細菌数および臨床所見における群間差はみられなかった.ウシLF濃度は,コントロール群と比べて実験群で有意に高いレベルが維持された.ヒトLFおよびエンドトキシンの濃度変化量には群間差はみられなかったが,実験群のGCFでは低レベルで推移する傾向が認められた.以上から,ウシLF配合錠菓の継続的な経口投与により,歯周病原細菌が減少することが臨床レベルで初めて確認された.ウシLFのレベルがGCFである程度維持され,歯肉縁下プラーク細菌を抑制した可能性が考えられる.食品成分であるウシLFを配合した錠菓の経口投与は,より安全な歯周病の予防法として有望であることが示唆された.
  • 安藤 進, 大城 麻紀, 大田 舞子, 宮崎 真至, 三冨 純一, 三冨 朝子, 今井 元
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 292-298
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,光重合型レジンの屈折率がレジンの色に及ぼす影響を検討することである.屈折率の異なる5種類の試作光重合型レジン(松風)を用いてそれぞれのペーストで直径8mm,厚さ1.0mmのディスクを製作した.照射後,ただちに白および黒板背景色上に試片を置き高速分光光度計(CMS-35FS/C,村上色彩技術研究所)で測色した.CIEL*a*b*,色差(ΔE*ab値:Color difference),透明性(TP値:Translucency parameter),不透明性(OP値:Opacity parameter)および分光反射率について検討した.統計処理は,ANOVAおよびDuncanの方法を用いて評価した.その結果,以下の結論を得た.1.試作レジンの屈折率は,L*値,C*値,ΔE*ab値,TP値,OP値および分光反射率に影響を及ぼした.2.試作レジンの屈折率が大きくなるのに伴って,L*値は上昇した.一方,C*値は背景色に影響を受け,試作レジンの屈折率が大きくなるのに伴って,白板上では低下し,黒板上では上昇する傾向を示した.3.ΔE*ab値は,試作レジンの屈折率差が大きくなるにつれて大きくなり,その影響は黒板背景で著明であった.4.硬化後に,マトリクスレジンとフィラーの屈折率差が小さい試作レジンのTP値は,最も高い値を示した.また,試作レジンの屈折率が高くなるのに伴って,低下する傾向が認められた.5.硬化後に,マトリクスレジンとフィラーの屈折率差が大きい試作レジンのOP値は,最も高い値を示した.また,試作レジンの屈折率が高くなるのに伴って,上昇する傾向が認められた.6.試作レジンの屈折率差が大きくなるのに伴って分光反射率は高くなる傾向を示した.また,分光反射曲線の形態は背景色の影響を受け,特に長波長域では白板上で上昇し,黒板上では逆に低下する傾向が認められた.
  • 小西 美徳, 鈴木 英明, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 299-307
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    齲蝕は世界的に最も頻度の高い口腔疾患の一つであるとともに,Streptococcus mutansを代表とする齲蝕原因菌による内因性疾患であることが明らかにされている.近年,健康に対する認識の向上とともに自然食品への関心が高まり,それらの健康への効用ならびに薬効作用が注目されている.柿(Diospyros Kaki Thunb.)は,日本古来より果実としてなじみの深い食品であるとともに生薬としても用いられ,抗酸化作用,抗炎症作用,抗菌作用などのいくつかの生物学的活性を有する.今回,われわれは抗吃逆剤として用いられてきた柿の蔕(へた)を乾燥した柿蔕(してい, Kaki Calyx)の抽出成分に着目した.本研究の目的は,より有効な齲蝕予防を行うために柿蔕抽出成分であるウルソール酸およびオレアノール酸の抗菌作用について,in vitro実験において調べることである.検討の結果,以下の知見が得られた.1. S. mutansに対する最小発育阻止濃度は,ウルソール酸において60μg/ml,オレアノール酸において120μg/mlであった.2. Actinomyces viscosusに対する最小発育阻止濃度は,ウルソール酸において30μg/ml,オレアノール酸において60μg/mlであった.3. ウルソール酸ならびにオレアノール酸の抗菌作用は,S. mutansおよびA. viscosusのresting cellに対して殺菌的であった.4. ウルソール酸ならびにオレアノール酸は,S. mutans PS-14(c)株産生粗glucosyltransferaseのショ糖依存性非水溶性グルカン合成活性を顕著に阻害した.以上のことより,柿蔕抽出成分であるウルソール酸およびオレアノール酸は齲蝕原因菌に対して顕著な殺菌作用が認められ,抗齲蝕作用を有することが示唆された.
  • 大場 志保, 福嶋 千春, 藤田(中島) 光, 岩井 啓寿, 壹岐 宏二, 池見 宅司
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 308-315
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    近年,窩底部や側壁の着色を遮蔽し,積層されるコンポジットレジンの半透明性をできるだけ損なうことのないオペークレジンが市販されるようになり,より審美的に優れた修復処置が可能となった.オペークレジンに関しては,コンポジットレジンと同様の強度を有し,前述の着色を遮蔽する効果とともに透明性のある物性が求められる.そこで今回は,ジルコニアをフィラーとしたコンポジットレジンの背景色遮蔽効果に着目して,そのオペークレジンとしての適性を調べるとともに,積層されたコンポジットレジンの背景色遮蔽を予測するための基礎的情報を得ることを目的として実験を行った.測色は,接触式三刺激値直読型測色器を採用し,試料のTP値は黒色と白色板を背景として得られたL*a*b*値から算出した.そして,ジルコニアフィラーの充填量と試料厚さの違いによるTP値からオペークレジンの有用性を調べ,市販コンポジットレジン試料を積層した際のTP値を求めた.さらに,それらのTP値から,本オペークレジン試料とコンポジットレジン試料を積層した際のTP値を予測する方法について検討した.その結果,以下の結論を得た.1. 本実験に使用したジルコニアフィラーは背景色遮蔽効果があり,オペークレジンのフィラーとしての適性を有していることが確認された.2. コンポジットレジン自体も背景色遮蔽効果を有しているが,試料厚さ3.0mmにおいても背景色の影響が表れることが示された.なお,顔料によりそのTP値は変化するものと考えられた.3. 本実験条件のコンポジットレジン試料B2とA4において,ジルコニアフィラー充填率6%のオペークレジン試料を1.0mmの厚さとし,コンポジットレジン試料を2.0mmの厚さで積層することで,両者ともTP値2.0以下が得られた.4. オペークレジン試料のTP値,コンポジットレジン試料のTP値ならびに背景色の色差から,積層試料のTP値が予測できる計算式を導き出すことができた.
  • 若森 めぐみ, 山本 俊郎, 赤松 佑紀, 西垣 勝, 大迫 文重, 雨宮 傑, 林 誠司, 中西 哲, 金村 成智
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 316-322
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    日常臨床において,根尖性歯周炎は局所炎症が消失しても,しばしば疼痛が持続することがある.本症状には,歯根表面に存在する感覚受容体である歯根膜に存在する知覚神経線維,および上頸神経節由来の交感神経終末の関与が考えられる.そこで本研究では,根尖周囲組織における知覚神経および交感神経線維の根尖性歯周炎への関与について検討を加えた.根尖性歯周炎ラットモデルを作製,灌流固定後,下顎骨を摘出,凍結切片を作製した.得られた切片に対して,hematoxylin eosin(HE)染色と知覚神経線維中のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP : calcitonin generelated peptide)および交感神経線維中のカテコラミン合成律速段階酵素の一つであるチロシンハイドロキシラーゼ(TH : tyrosine hydroxylase)について免疫組織化学の手法を用いた.さらにCGRPおよびTH免疫反応陽性神経線維に対しては,半定量化画像解析を実施した.歯髄感染を起こした根尖周囲組織のHE染色では,歯根膜腔の拡大,炎症性細胞の増加を認め,根尖性歯周炎が発症していた.根尖性歯周炎を発症した根尖周囲組織のなかでも歯根膜は,健全な歯根膜と比較してCGRPおよびTH免疫反応性が亢進,TH免疫反応陽性神経線維の発現強度が有意に増強した(p<0.05).以上から,根尖性歯周炎における持続した疼痛や炎症の一因として,歯根膜に存在する知覚神経線維中のCGRP免疫反応陽性神経線維および交感神経線維中のTH免疫反応陽性神経線維が関与する可能性が示唆された.
  • 中村 弘隆, 鵜飼 孝, 吉永 泰周, 尾崎 幸生, 金子 高士, 白石 千秋, 岸本 真実, 小野山 美穂, 阿部 嘉裕, 安部 達也, ...
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 323-330
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    カンゾウ(甘草)の根から抽出されるグリチルレチン酸には抗炎症作用などさまざまな薬効があることが知られており,歯磨剤などのさまざまな医薬部外品や医薬品に配合されている.しかしながら,炎症性骨吸収に対するグリチルレチン酸の抑制作用を検討した報告はない.われわれは,lipopolysaccharide(LPS)誘導性歯槽骨吸収マウスモデルの歯肉にグリチルレチン酸を投与して,LPSによって誘導された歯肉の炎症と,歯槽骨吸収に対するグリチルレチン酸の抑制作用を調べた.グリチルレチン酸はLPS投与による歯槽骨表面の破骨細胞形成を有意に減少させた.さらに,歯肉結合組織中のinterleukin(IL)-1βおよびreceptor activator of NF-κB ligand(RANKL)陽性細胞数を計測したところ,グリチルレチン酸を投与された群ではLPS投与群に比較してIL-1β,RANKL陽性細胞数が有意に減少していた.以上の結果より,グリチルレチン酸はLPS誘導性骨吸収を抑制し,IL-1βおよびRANKL産生抑制が関与している可能性が示唆された.
  • 西村 香, 東光 照夫, 久光 久
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 331-343
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    有髄歯のホワイトニング(漂白法)は,歯質を全く切削しない保存的な審美性改善法として高い関心を集めているが,半数程度の症例に発生するとされる知覚過敏は大きな問題の一つとなっている.本報告は,漂白剤と知覚過敏抑制材を併用した際の漂白効果への影響を検討し,さらに実際の臨床で,知覚過敏抑制材を併用した場合の影響についても検討したものである.使用した材料は,知覚過敏抑制材MSコート™(サンメディカル,以下,MS-C),漂白剤は松風ハイライト™(松風,以下,HL),Niteホワイト・エクセル™(Discuss Dental,USA,以下,NWE)の2種である.色調変化の測定用試片には,ヒト抜去歯34本を使用した.表面色調への影響は,そのうち22本を半裁し,1. HL漂白→MS-C塗布→HL漂白3回, 2. HL漂白4回, 3. MS-C塗布→NWE漂白, 4. NWE漂白の4群に分けた.処置前後の歯冠部のCIE L*a*b*値を測定し,色差ΔE*を算出した.歯質内部への影響は,残り12本を半裁し, 1. MS-C塗布→HL漂白, 2. HL漂白, 3. MS-C塗布→NWE漂白, 4. NWE漂白の4群に分け,半裁面から写真撮影することで検討した.さらに抜去歯5本を用いて,走査電子顕微鏡(SEM)による表面性状の観察も行った.臨床的な知覚過敏抑制効果は,被験者8名の上顎右側前歯をControlとし,左側前歯にはMS-Cを塗布し,左右NWE漂白を行い,知覚過敏と色差ΔE*を検討した.その結果,表面の色調変化はHL漂白では漂白効果の差は認められなかったが,NWE漂白ではMS-Cを併用した場合,漂白効果は3/4程度に減少した.歯質内部の明度変化の検討では,歯質内部にも漂白剤が浸透していることが確認された.SEM観察では,HLはMS-C被膜を剥離させる作用が認められ,NWEはHLよりもMS-C被膜へのダメージが少ないことが確認された.HLとMS-C併用では漂白効果は変化せず,NWEとMS-C併用では効果は減少するが,完全には阻害しないと考えられた.臨床では,MS-C塗布の有無でもNWEの漂白効果に差は認めず,MS-C塗布により知覚過敏の発生は減少した.漂白時の知覚過敏への対応は,多くの症例で処置時間の短縮や使用間隔を空けることで問題ないとされるが,強い知覚過敏が発生した場合には,知覚過敏抑制材を併用することも有効であると示唆された.
  • 萩谷 洋子, 吉岡 隆知, 須田 英明, 大林 尚人
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 344-351
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,歯科用CTで撮影された画像を用いて,垂直性歯根破折(VRF)のスクリーニングを行うことの有用性について評価した.歯科用CTとして,3DXマルチイメージマイクロCT®(モリタ製作所,以下,3DX)を用いた.それぞれ15症例ずつのVRFおよび非VRFと診断された,術前3DX歯列平行断像を研究対象とした.無作為に提示されたこれらの画像について,5名の歯科医師が根尖部透過像の輪郭を描出した.根尖病変形態を評価する2つの指標(複雑度およびRadial SD)を用いて,VRFを示す確率モデルをロジスティック回帰モデル式により構築した.複雑度およびRadial SDについて,「VRFの診断」および「読影者」を要因とする二元配置分散分析を行った.有意水準は5%とした.また,ロジスティック回帰分析により,選択された因子のROC(receiver operating characteristic : 受信者動作特性)曲線を用いて,VRF群と非VRF群を最適分類するためのカットオフ値および曲線下面積を求めた.このカットオフ値により各症例を「破折」および「非破折」と判定し,各読影者間の一致率κ値について検討を行った.複雑度およびRadial SDについて,読影者間に統計学的な有意差は認めなかった(p>0.05)が,破折の有無については有意差を認めた(p<0.05).さらに,ロジスティックモデル式はP(x)=1/(1-e-x),x=-9.432+0.094×(複雑度)+0.144×(Radial SD)となり,このロジスティックモデル式におけるROC曲線では曲線下面積は0.93と計算された.カットオフ値は,敏感度および特異度が最大となる0.475とした.このカットオフ値を用いた「破折」および「非破折」の判定における感度,特異度および正確度はそれぞれ0.87,0.89および0.88と計算され,すべての読影者間のκ値の平均値は0.79となった.歯科用CT画像では,VRF群の根尖病変形態は,非VRF群よりも複雑であることが明らかとなった.また,根尖病変の形態解析により,破折確率を算出することが可能であった.根尖病変の形態描出については読影者間に差がないことが示された.以上の結果より,歯科用CTで撮影された画像を用いてVRFのスクリーニングを行うことの有用性が示唆された.
  • 廣瀬 直子, 小澤 有美, 逸見 恵里, 八木 裕太, 村井 宏隆, 石原 祥世, 片山 直
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 352-359
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    近年,審美修復のニーズが高まってきているなか,コンポジットレジン修復が増えてきている.コンポジットレジンは,半透明性材料であるため,修復部分の色に着色した歯質の色が大きく影響する.臨床上,歯質の保護を目的とし着色した歯質を残すことがあるため,シェードガイドを用いて選択した色でのコンポジットレジンの修復では,周囲の歯質の色と適合しない場合がある.このようにコンポジットレジンの色の適合性には,窩洞の歯質の色が重要な役割を果たしている.そこで今回われわれは,感染象牙質と感染象牙質除去後の歯質の色の測定を行った.明海大学附属病院外来を訪れた28歳から83歳までの患者で,永久歯の齲蝕を有する日本人男女19名(男性:9名,女性:10名)の歯頸部1/3における齲蝕を認める上下顎前歯,第一小臼歯の上顎25本,下顎21本の計46本を被験歯とした.被験歯の感染象牙質除去前と除去後の窩洞内の色を一定水準に補正するため,Casmatch(共和時計工業)を被験歯近くに貼り付けデジタルカメラで撮影し,パソコンソフトを用い測色した.感染象牙質除去は,齲蝕検知液で染色された部分を除去するなどの一般の除去の基準に則して行った.測色結果より,すべての歯において感染象牙質除去前に比べ,除去後のほうがL*の値が有意に高かった.除去前後の色差においてすべての値がΔEab2.0以上であり,NBS(National Bureau of Standards)単位から人間の視覚で識別可能であることがわかった.また,健全象牙質の色より感染象牙質除去後のL*値は上下顎歯とも低かった.このことから,審美修復時には,着色象牙質の色を遮蔽する材料の併用が必要であることが示唆された.
  • 黒川 弘康, 岩佐 美香, 大藤 竜樹, 市野 翔, 山田 健太郎, 安藤 進, 宮崎 真至, 細矢 由美子
    原稿種別: 原著
    2008 年 51 巻 3 号 p. 360-367
    発行日: 2008/06/30
    公開日: 2018/03/30
    ジャーナル フリー
    光重合型レジンは,修復操作の最終ステップである研磨が容易であるとともに,修復後にその研磨面状態が維持されることが良好な予後を得るために重要である.そこで,温熱刺激の負荷に伴う光重合型レジンの研磨面性状の変化について,表面粗さ,光沢度および色調変化を測定することによって検討した.供試した研磨システムとしては,スーパースナップ(松風)を用い,光重合型レジンとしては,Beautifil II(松風,Gradia Direct(ジーシー),Clearfil Majesty(クラレメディカル),Filtek Supreme XT (3M ESPE,USA),Palfique Estelite Σ(トクヤマデンタル)およびEstelite Σ Quick(トクヤマデンタル)の合計6製品を用いた.試片は,内径10mm,高さ5mmのテフロン型にレジンペーストを填塞,圧接し,ポリストリップスを介して60秒間照射し,重合硬化して製作した.次いで,SiCペーパーの#400を用いて,照射面から0.5mm削除し,これを研磨開始基準面とした.これらの基準面に対して,マイクロモーターの回転数を無荷重の状態で10,000rpmとして荷重0.5Nの条件で,スーパースナップの緑および赤の順で15秒間ずつ,合計30秒間,注水することなく研磨を行った.さらに,研磨を行った試片に対し,サーマルサイクル試験装置を用いて5-55℃を1サイクルとする温熱刺激を1,000,3,000および10,000回負荷し,これらの試片の表面粗さ,光沢度および色調の測定を行った.その結果,以下の結論を得た.1. 光重合型レジンの表面粗さは,温熱刺激の負荷によって実験期間を通じていずれの製品においても変化は認められなかった.2. 光重合型レジンの光沢度の持続性は,温熱刺激の負荷に伴い製品によって異なる傾向を示した.すなわち,Gradia Direct,Palfique Estelite ΣおよびEstelite Σ Quickでは,サーマルサイクル負荷後も光沢度に変化は認められなかったものの,他の3製品では有意な低下を示した.3. 光重合型レジンのΔE*ab値は,温熱刺激の負荷によっていずれの製品においても実験期間を通じて変化が認められた.4. 光重合型レジンの走査電子顕微鏡観察からは,Palfique Estelite ΣおよびEstelite Σ Quickではサーマルサイクリング負荷後も平滑な面を示したが,それ以外の製品ではフィラーの脱落による粗な面を呈した.
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