日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
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原著
サーマルサイクリングがコンポジットレジンの研磨面性状に及ぼす影響
黒川 弘康岩佐 美香大藤 竜樹市野 翔山田 健太郎安藤 進宮崎 真至細矢 由美子
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2008 年 51 巻 3 号 p. 360-367

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抄録

光重合型レジンは,修復操作の最終ステップである研磨が容易であるとともに,修復後にその研磨面状態が維持されることが良好な予後を得るために重要である.そこで,温熱刺激の負荷に伴う光重合型レジンの研磨面性状の変化について,表面粗さ,光沢度および色調変化を測定することによって検討した.供試した研磨システムとしては,スーパースナップ(松風)を用い,光重合型レジンとしては,Beautifil II(松風,Gradia Direct(ジーシー),Clearfil Majesty(クラレメディカル),Filtek Supreme XT (3M ESPE,USA),Palfique Estelite Σ(トクヤマデンタル)およびEstelite Σ Quick(トクヤマデンタル)の合計6製品を用いた.試片は,内径10mm,高さ5mmのテフロン型にレジンペーストを填塞,圧接し,ポリストリップスを介して60秒間照射し,重合硬化して製作した.次いで,SiCペーパーの#400を用いて,照射面から0.5mm削除し,これを研磨開始基準面とした.これらの基準面に対して,マイクロモーターの回転数を無荷重の状態で10,000rpmとして荷重0.5Nの条件で,スーパースナップの緑および赤の順で15秒間ずつ,合計30秒間,注水することなく研磨を行った.さらに,研磨を行った試片に対し,サーマルサイクル試験装置を用いて5-55℃を1サイクルとする温熱刺激を1,000,3,000および10,000回負荷し,これらの試片の表面粗さ,光沢度および色調の測定を行った.その結果,以下の結論を得た.1. 光重合型レジンの表面粗さは,温熱刺激の負荷によって実験期間を通じていずれの製品においても変化は認められなかった.2. 光重合型レジンの光沢度の持続性は,温熱刺激の負荷に伴い製品によって異なる傾向を示した.すなわち,Gradia Direct,Palfique Estelite ΣおよびEstelite Σ Quickでは,サーマルサイクル負荷後も光沢度に変化は認められなかったものの,他の3製品では有意な低下を示した.3. 光重合型レジンのΔE*ab値は,温熱刺激の負荷によっていずれの製品においても実験期間を通じて変化が認められた.4. 光重合型レジンの走査電子顕微鏡観察からは,Palfique Estelite ΣおよびEstelite Σ Quickではサーマルサイクリング負荷後も平滑な面を示したが,それ以外の製品ではフィラーの脱落による粗な面を呈した.

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© 2008 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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