日本歯科保存学雑誌
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原著
テーパード毛歯ブラシの臨床効果に関する研究
吉永 美穂鵜飼 孝吉永 泰周白石 千秋金子 高士岸本 隆明佐藤 佳昌吉村 篤利原 宜興
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キーワード: 歯ブラシ, バス法, 歯肉炎
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2012 年 55 巻 2 号 p. 158-164

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抄録

本実験の目的は,軽度の炎症を認める歯肉にテーパード毛を使用した歯ブラシ(ディープクリーン®;花王)を使用したときの臨床効果を明らかにすることである.被験者は,長崎大学病院歯周病治療室にメインテナンスのために通院中の患者のうち,以下の条件を満たす者30名とした.1.上下顎4〜4のうち3歯のそれぞれの頬側に,Probing depth (PD)が2〜4mmのBleeding on Probing (BoP)を伴う歯周ポケットが1カ所以上存在する.この3歯の頬側を被験部位とする.2.被験部位には歯頸部マージンが不適合な補綴物が装着されていない.3.過去1カ月以内に抗菌薬,抗炎症薬,ステロイド剤を服用していない.実験には歯ブラシD(ディープクリーン®)と対照歯ブラシとしてすでに市販されている歯ブラシS(デンターシステマ®;ライオン)を用いた.試験期間は4週間で,その間被験者が通常行っているブラッシング法は変更せず,1被験部位当たり試験歯ブラシを用いたバス法による10秒間のブラッシングを追加した.ベースライン(BL)時,2週目,4週目にPlaque Index (PlI), PD, BoPなどの臨床パラメーターの計測を行った.その結果,BL時との比較において歯ブラシS群の2週目のPlI, PD, BoP (p<0.05, p<0.01, p<0.05)と4週目のPlI, PD, BoP (p<0.05, p<0.01, p<0.05)で有意な減少を認めた.また歯ブラシD群でもBL時との比較において2週目のPlI, PD, BoP (p<0.05, p<0.01, p<0.01)と4週目のPlI, PD, BoP (p<0.01, p<0.01, p<0.001)で有意な減少を認めた.また,どの時点においても群間の差は有意ではなかったが,BoPとPlIは歯ブラシDで低い傾向にあった.以上の結果から,テーパード毛を採用している歯ブラシを軽度の炎症が認められる歯肉に使用することは,その改善に効果的と考えた.

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© 2012 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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