日本歯科保存学雑誌
Online ISSN : 2188-0808
Print ISSN : 0387-2343
ISSN-L : 0387-2343
原著
アルコールフリー洗口液Listerine ZeroのStreptococcus mutansバイオフィルムに対する浸透・殺菌効果
竹中 彰治大墨 竜也若松 里佳寺尾 豊大島 勇人興地 隆史
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 56 巻 2 号 p. 105-112

詳細
抄録

目的:リステリンはバイオフィルム中の細菌に対して短時間で膜傷害効果を示すと報告されているが,溶剤としてエタノールを含むため粘膜刺激性の強さが短所であった.本研究ではこの点の改良を意図して開発されたノンアルコールタイプのListerine Zeroについて,Streptococcus mutansバイオフィルムに対する浸透性および殺菌能を評価した.材料と方法:Listerine Zero(Z群),リステリンフレッシュミント(F群)およびグルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(Peridex, P群)を被験洗口液とし,陰性対照として緩衝液(C群)を用いた.また,S. mutansバイオフィルムはガラスベースディッシュを用いて24時間,嫌気培養により形成した.各洗口液の浸透性は,Calcein-AMで蛍光染色されたバイオフィルムに各洗口液を作用させた後,共焦点レーザー顕微鏡により蛍光消失のタイムラプス解析を行い測定した.また,生死鑑別(Live/Dead)蛍光染色法およびプレートカウント法を用いて,各洗口液の殺菌効果を比較した.結果:バイオフィルムの最大厚みは32μmであった.各洗口液とも50%蛍光消失までの時間(T50)はバイオフィルムの厚みと正の相関関係があり,それぞれy=2.012x,決定係数(R2)=0.992(Z群), y=1.992x, R2=0.986(F群), y=10.579x, R2=0.994(P群)であった.浸透速度はP群が他群より有意に低値であったが(共分散分析,p<0.05),Z群,F群間には有意差はなかった(同,p>0.05).各洗口液30秒作用後にLive/Dead染色法にてPropidium Iodide(PI,死菌のマーカー)陽性率を比較したところ,F群,Z群は99.8±0.1%を示したがP群では41.4±5.9%であった.さらに,30秒作用後の生菌数をプレートカウント法で求めたところ,すべての洗口液群がC群と比較して有意に少数(Dunnett test, p<0.05),またF群およびZ群はP群より有意に少数であったが(Steel-Dwass test, p<0.05),F群とZ群の間に有意差はなかった(同,p>0.05).結論:Listerine Zeroおよびリステリンは,少なくとも32μm以下の厚みのS. mutansバイオフィルムに対して同等の膜傷害効果と殺菌効果を与えた.また,Listerine Zero,リステリンともグルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液と比較して有意に高いバイオフィルム浸透性と殺菌効果を示した.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
次の記事
feedback
Top